第136話 若いうちは冒険すること

 一夜明けた早朝にて。

 若武者『孫策』は誰よりも早く軍船の一艘いっそうに乗り込み、その他9艘、計10艘の軍船と共に、敵のいる鄧城とうじょうへと船を走らせた。


「んっん~!風が気持ちいいな~!!」


 孫策は船頭に立ち、揚子江より吹く風を感じながら、これからの戦のことを楽しみにしていた。

 彼にとって今回の戦は初陣となる。

 しかし、彼は全く恐れていなかった。

 体の内から湧き上がる気持ちの高ぶりを彼は抑えることが出来なった。


(数艘の軍船だけで敵陣に突撃!しかもこれが初陣!さらに大将の父上に黙っての出陣!!・・・父上はともかく母上は怒ってるかな~。あはははは!)


 孫策は父に無断で軍船を走らせていた。しかも、孫策は母に相談せずに戦に参加していた。

 母に戦に参加することを話さなかったのは、話せば猛反対されるのがわかっていたからだ。

 事実、昨夜、孫策が戦に参加するとの報を聞いた彼の母は大慌てし、孫策を止めるように仕向けたのであった。

 しかし、孫策はその上をいった。

 母の目論見を察知した孫策は日が昇る前に戦の準備を整え、岸に向かったのだ。

 そして今に至るというわけだ。


(母上には申し訳ないが、私は根っからの武人だ。内に籠ってちまちまするよりも、外の世界で暴れ回る方が性に合っている。・・・孫権。内政は任せたぞ!!)


 若さあふれる孫策は、弟の孫権に内務のことは全て任せて、戦場へと身を投じたのであった。



「ははははは!孫策め!頼もしい奴よ!やはり虎の子は虎であるな!!」


 長沙の岸にて孫策の出陣の報を聞いた孫堅は大笑いした。

 孫堅は昔、大勢の海賊相手に単騎突撃したことがあった。

 その若かりし頃の自分の姿と孫策を重ね合わせたのだ。


「やはり孫策は私の息子だ!無茶をしよる!・・・皆の者!孫策におくれを取るな!!」


「「うおおおぉぉぉぉ!」」


 出陣の合図とともに、孫堅は長沙の岸に並べてあった軍船500を率いて、孫策の後を追いかけたのであった。

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