第123話 磐河の戦い その三

 絶体絶命の公孫瓚を助けたのは、もと袁紹の家来の『趙雲』であった。


 もと袁紹の家来の趙雲が何故此処にいたのか?


 それは、趙雲が袁紹の将来に見切りをつけ、故郷に帰ろうとしていたからである。

 その道中で公孫瓚が文醜に襲われているところに偶然出くわし、公孫瓚を助けたのであった。

 事情を聞いた公孫瓚は数度頷き、彼にとある提案をした。


「そういう訳であったか。・・・趙雲殿。私は才徳兼備さいとくけんびの人間ではないが、良ければ私に仕えてみないか?手厚くもてなすぞ。」


「ふ~む。・・・客将としてならとどまってもよいですが・・・それで如何かな?」


「それで結構だ。では私の陣に向かうとしよう。」


「ようござる。」


 趙雲を客将として味方に付けた公孫瓚は破顔一笑はがんいっしょう、喜んで陣へと帰還したのであった。



 公孫瓚の陣営にて。

 陣へと帰還した公孫瓚は、会議を開き、家臣に趙雲のことを紹介したが、彼らは皆、趙雲のことを懐疑の目で見つめた。


((う、胡散臭ぇ~~。こいつ袁紹の間者かんじゃ(=スパイ)じゃないのか?))


 彼らがそう思ったのも当然である。

 趙雲は、ついこの間まで袁紹の部下であったのだ。

 さらに、公孫瓚のピンチを助けたという、そのタイミング。それは偶然の一言で済ませて良いものでは無いと感じたからだ。


 紹介が終わり、趙雲がその場を去ったのを見計らって、家臣たちは公孫瓚に彼らが感じた疑念をぶつけた。

 家臣からの話を聞いた公孫瓚も「確かにお主たちの考えも一理あるな。」と、腕を組んで考え直した。

 そして手を打って、家臣にこう提案した。


「よし。ではこうしよう。趙雲殿には500の兵を預けて、前陣ではなく後陣を守ってもらうことにする。・・・これなら皆も文句なかろう。」


 この公孫瓚の提案に家臣たちも「それなら結構です。」と納得した。


 家臣一同が趙雲の件を納得したようなので、公孫瓚は明日の決戦に向けての最終確認を行った。


「他に不満な点はあるか?」


「「ありませぇん!!」」


「よし!では明日は、我が軍が誇る『白馬陣はくばじん』で袁紹軍と対決する!皆の者!気合を入れよ!!」


「「おう!!」」


 こうして趙雲の紹介も含めた会議が終わった。


 そして、明くる日。

 公孫瓚は、再び盤河のほとりに立ち、白馬2千頭を並べて、袁紹軍と対峙したのであった。

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