第114話 悩んだら考え直そう
「逃げるぞ、逃げるぞ!皆の者、逃げるぞ!!」
自陣へと帰った孫堅は急いで帰国の準備を再開した。
「男の魂に誓う!」などという嘘の誓いを立てた彼は、もうこの地に滞在する事が出来なかったのだ。
「急げ!急げ!急げ!急げ!急げ!急げ!急げぇい!!!」
部下たちを急かしに急かし、帰国の準備が整った孫堅軍は、すぐさま洛陽を出立した。
孫堅軍出立の報はすぐに袁紹のもとに届いた。
報を受けた袁紹は怒り狂い、諸侯たちに追討命令を下した。
ギャーギャー、キョーキョー、ニョワーニョワーと騒ぐ連合軍本陣に1人の人物が赴いた。
本陣に赴いた人物。それは、河内へと落ち延びていた曹操であった。
彼は残った残党たちと共に洛陽へと帰還していたのであった。
「騒がしいな、袁紹よ。」
「おお、曹操ではないか。よくぞ無事であった。皆、お主の事を心配して折ったのだぞ。」
「・・・そうか。」
「うんうん。それではお主の無事を祝して宴会を開くとしよう。」
「またれい。宴会は結構だ。それよりも諸侯の皆に話がある。」
曹操の無事を祝そうとする袁紹を制して、曹操は憤然とした態度を露わにして、諸侯一同に話しかけた。
「口では大儀だと唱えていても、心が一致していなければ同士も同士ではない。このまま此処にいても無駄な争いが起きるだけだ。」
「私は国に帰ってしばらく考え直したい。諸侯たちも考え直した方が良いだろう。・・・以上だ。」
そう言って曹操は本陣を去り、即日の内に洛陽を出立した。
その頃、孫堅軍は追討軍の攻撃により、壊滅的な打撃を受けていた。
次々と討たれる部下たちを尻目に、孫堅は馬を走らせ、黄河のほとりまで逃げのびた。
そして、そこにあった船を一隻盗むと、孫堅は江東へと逃げ渡った。
「な、なんていうことだ。あれほどいた部下がこれほどまでに・・・。」
孫堅軍の兵たちは、かつての同志たちにより討ち取られ、その数は10にも満たないほどになっていた。
しかし、彼の手には朝廷に伝わる玉璽があった。
玉璽を手にしたことにより、多くの部下を失った孫堅。
やり場のない怒りと悲しみにより、孫堅の目に涙があふれる。
キラキラと美しく輝く大河に負けぬ、瞳から流れる雫の輝き。
そして、彼は男泣きと共にこう叫んだ。
「死んだ部下たちよ!見ておれ!俺が天下に号令をかけるその日を!!」
董卓討伐のため集まった諸侯たち。
彼らの気持ちはもうそれに向いていない。
あるのは醜い権力争いのみ。
そして今、諸侯たちの争いの火ぶたが切って落とされようとしていた。
第五章 完
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