第112話 仮病はほどほどに
「明日にでも洛陽を発つなんて、随分と急だよな~。」
「仕方ないよ。殿さん、体調悪いんだってさ。ここで無理して病が重くなったら、俺たちだって困るよ。」
「そうだな。・・・なら無駄口叩いてないで仕事をするとしますか。」
孫堅の部下たちは帰国の準備をこなしていた。
このまま問題が無ければ、上記の部下たちの会話通り、孫堅軍は明日にでも洛陽を発つ手筈であった。
しかし、そう上手くいかないのが乱世の常。
準備をしている孫堅の部下の1人が陣を抜け出し、総大将の袁紹の陣へと向かい、袁紹に内通した。
「袁紹様。孫堅様の病気の件は嘘っぱちでございます。」
「なにっ?嘘とな?」
「はい、実はですね。孫堅様はピーをピーしまして、それでピーヒャラピーを理由にピピピのピーするとのことです。」
「むむむ。・・・なるほど。そう言う理由か・・・。納得したぞ。良く報告してくれた。」
「エヘヘヘヘ。で、ですね。お代の方を・・・。」
「・・・ふんっ。」
袁紹は内通者に褒美を渡すと、家臣一同に事の次第を告げた。
明くる日の朝、諸侯集まる袁紹の陣営にて、孫堅は超が100個つくであろう程のわざとらしい咳払いをしながら、袁紹に帰国理由の説明をしていた。
「え、袁紹殿・・・申し訳ありませんな。急にこんなことを申しまして。・・・この通り体調が悪く・・・ゴホッ!ゴホゴホッ!・・・すいま・・・ケホッ!ケホケホッ!・・・あ~キツイですわ~ゴホッ!ゴホッ!っと。・・・ってなわけで本国に帰らせて頂きますね。」
袁紹に帰国の事を伝えた瞬間、袁紹は
「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」
と大笑いをした。
それを見た孫堅はムッとした表情になり、袁紹に怒鳴りつけた。
「え、袁紹殿!私の別れの言葉がそんなにおかしいか!失礼であろう!」
しかし、袁紹は動じることなく反論する。
「おやおや、先ほどの咳はどこへやら?随分と元気でありませんか。」
「むっ!? そ、そんなことはないぞ!私は体調が悪いのだ!ゲフンッ、ゲフンッ!!」
「はははは。孫堅殿。嘘はもうよろしいですぞ。私は全てを知っていますので。」
「な、なにっ!」
袁紹の挑発的な態度に孫堅はカッとなって声を荒げてしまった。
その孫堅の反応を見た袁紹は確信した。先日の孫堅の部下からの密告が間違いなかったことを。
「おやおや、その反応。どうやら間違いないようですな。よかった、よかった。」
「!? (し、しまった!!)」
「またその反応。孫堅殿は嘘が下手ですな~。もうネタは上がってますよ。」
「ネ、ネタだと・・・一体何のことやらサッパリですな。」
あくまでも白を切る孫堅の態度に、今度は袁紹が声を荒げた。
「いいかげんにしろ、孫堅!貴公が昨夜、井戸より玉璽を手に入れたことは知っておるのだ!これ以上隠すというのなら諸侯一同、皆が黙っておらぬぞ!」
「・・・し、知らぬモノは知らぬ!!」
「こ、こいつ!!」
瞬間、2人は腰に差していた剣を抜いたのであった。
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