第90話 無視するのは失礼
各国の英雄たちが集まる場にて、自信満々で名乗りを上げた関羽雲長。
赤い顔に立派な髭、そしてムキムキに鍛え上げられた肉体に青龍偃月刀を引っ提げ、関羽は袁紹からの下知を待つのであった。
「誰かおらぬか!華雄を倒せる者はおらぬのか!!」
「袁紹殿!この関羽雲長にお任せあれ!!」
「ええい!誰も名乗りを上げんのか!こんなことで董卓が討伐出来ると思っておるのか!!」
「袁紹殿!ここに華雄を討ち取れる者がおりますぞ!!」
「なんたることだ!このままでは全滅だ!将がおらぬなら仕方ない!諸君!打開策を提案するのだ!!」
「袁紹殿!そんな策は必要ありません!拙者が出れば済むことです!ご命令を!!」
「何故皆黙っておる!打開策もないというのか!このポンコツ英雄どもめ!!」
「袁紹殿!ここです、ここ!目の前に華雄の首を取ってくることの出来る武将がおりますぞ!拙者を見てくだされ!!」
「くそーーー!このまま敗れてしまうのか!畜生ーーーーー!!」
「袁紹殿ぉぉぉぉぉぉ!拙者にご命令をして下されぇぇぇぇぇ!!」
連合の総大将である袁紹は関羽を徹底的に無視していた。
関羽は武勇に優れた英雄であるが、今の彼の立場は田舎の小役人の家臣、要は足軽程度の身分でしかなかった。
そのため、名家の生まれで連合の総大将たる袁紹は関羽のことを徹底的に無視していた。
徹底的に無視する袁紹を見て、このままでは
「袁紹よ。今、貴公の前で名乗りを上げている武人を戦場に送り出してみてはいかがかな?」
「なにっ!曹操よ!この火急の事態に足軽を戦場に出せというのか!そんなことをすれば良い笑いものになるぞ。」
「笑う者は笑わせておけばよい。それよりもこの事態を乗り切る方が先決だ。それに、この者は中々良い面構えをしている。・・・関羽殿、自信はあるのであろうな?」
「無論です。サクッとスパッとメキャッと華雄を討ち取って見せましょう。」
「よろしい。・・・では袁紹よ。関羽殿を出陣させるが良いな?」
「お主の好きにせい!わしゃもう知らん!!」
袁紹は顔を真っ赤にして、頬を膨らませ、曹操の決断にプンスカプンスカと怒りを露わにした。
そんな袁紹など気にも留めず、曹操は杯に酒を注ぎ、関羽にそれを手渡そうとした。
「関羽殿。戦の前の景気づけに一杯飲むがよい。」
「感謝します。しかし、その酒は貴公が持っていて下され。華雄を抹殺した後で、ゆっくり味わわせてもらうとしますので。」
関羽はそう言って、準備していた一頭の馬を引き寄せ、馬の背にまたがると、馬の腹を蹴り、颯爽と戦場へと駆けて行った。
戦場に赴く関羽を見ながら、袁紹は曹操に再確認した。
「・・・曹操よ。本当に良かったのか?足軽なんて戦場に送り込んで。」
「構わんさ。討ち取ってくれるならそれで良し。もし討たれたとしても彼は足軽。こちらは痛くもかゆくもない。」
「確かにそうだが・・・。」
「安心しろ。結果はすぐにわかるさ。」
そう言って曹操は戦場へと目を移した。
曹操が先ほどから余裕をぶっこいているのには理由があった。
それは劉備ら三兄弟が連合軍に加わっていたからである。
彼らの実力は黄巾の乱で共闘したときに知っていたので、もし関羽が名乗りを上げなければ、自身が彼らを推挙するつもりであった。
(さて関羽よ。貴公の実力をもう一度見せてもらうとしよう。)
曹操はそう考えてニヤリと笑うのであった。
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