第34話 乱世の元凶

 張均は帝に拝謁した。

 帝の傍には誰もおらず帝一人であった。

 これ幸いにと張均はすぐに要件を伝えることにした。


「帝様。今日私が参った次第は真実を知って頂きたいからです。」


「真実?」


「はい。帝は天下が泣いているのをご存知でしょうか?民は飢えに苦しみ、病に倒れ、嘆き悲しみ、悲惨を絵に描いた様な有様でございます。」


「そんなことは余も知っておる。天下が乱れたからこそ黄巾党とかいう賊共が各地で暴れ回ったのであろう。」


「左様です。そして、その原因となったものを取り除いて頂きたいのです。真実を知り、病巣であるを取り除いて頂きたいのです。」


「彼らだと?」


「はい。『十常侍』を処罰して頂きたくお願い申し上げます。」


 張均は本小説での1話目に記載している十常侍の悪政について述べた。


「十常侍が・・・まさか・・・信じられぬ。」


 帝は信じられないという表情を浮かべた。


 霊帝は十常侍を信頼しきっていた。

 自分の元に届けられる政治の報告はいつも素晴らしい内容ばかりであったからだ。

 彼らは優秀で、自分を支えるために命を懸けている連中だと思っていた。

 「民たちは皆、帝の政治を褒め称え、幸せに暮らしております。」とまあ中身の無い、すっからかんな報告ばかりだったのだが、帝は疑うことなく報告を鵜呑みにしていた。

 しかし、そんな報告は嘘に決まっている。

 いつも素晴らしい報告などあり得ない。少し考えればわかることだ。

 それに気づかない霊帝はハッキリ言えばマヌケである。


 マヌケな王にダメな政治家。


 最悪の組み合わせが漢王朝を末期に追いやっていた。


「信じられないでしょうが本当の事です。帝。どうか彼らを追放して下さい。お願い致します。」


 張均は帝に頭を下げた。


 頭を下げる彼の背後に10人の人影が迫る。

 コツッ、コツッ、コツッと不気味な足音が鳴り響く。

 フフフフフと邪悪な笑い声が周囲を震わす。

 ゴゴゴゴゴという効果音が緊張感を持たせる。

 周りの景色がグニャリと曲がり、異様さを引き立てる。

 ピカーッ!!という光が彼らを照らし出す。

 そして、バーン!!というオノマトペが彼らの背後に現れた時、ようやく張均は彼らの存在に気付いた。


「はっ!」


 張均は頭を上げ、振り返ると10人の宦官たちが一人ひとりポージングを取りながらニヤニヤと笑い、張均を見つめていた。


「じゅ、十常侍!!」


そう、張均の背後に現れた10人の宦官こそが乱世の元凶『十常侍』その人たちである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る