第17話 師が良ければ弟子も良い

 青洲城の太守『龔景きょうけい』は劉備たち幽州軍を手厚くもてなした。

 3日3晩の馬鹿騒ぎの後、鄒靖軍は幽州へと帰ることにした。

 一方、劉備軍は幽州には戻らずに広宗こうそう(現在の河北省広宗県かほくしょうへいきょうけん)へと向かうことにした。

 自分の恩師である『盧植ろしょく』先生に会うためである。


 盧植は劉備の故郷である楼桑村出身で、劉備は少年の頃、盧植から文や兵法を学んだことがあった。

 またこの時、劉備は後に世話になる公孫賛こうそんさんという人物と知り合った。

 その後、盧植は村を出て、官職につき中朗将ちゅうろうしょうとなった。

 そして今、盧植は広宗の荒野で黄巾賊と戦っていた。



 劉備は幽州には戻らずに広宗へと向かう旨を鄒靖に話した。


「恩師である盧植先生が広宗で戦っている黄巾賊は首領の張角直属の正規兵とのこと。そのため、盧植先生は苦戦しているだろうと思いまして、私たち劉備軍が手助けに行きたい次第です。」


「そうか・・・あいわかった。かつての恩師のためとあらば、引止めるというのも野暮であろう。幽州太守の劉焉様には私からよく言っておこう。頑張るのだぞ。」


「はい!感謝いたします!」


 劉備は両手を組んで鄒靖に頭を下げ、頭を上げるとその場を後にした。

 劉備と鄒靖の別れはわりとあっさりした別れであった。


 幽州→青洲→広宗へと劉備は自身の故郷である楼桑村から南へ南へと歩を進めていた。

 休む間のない戦いの連続であったが、劉備は恩師のために歩みを止めないのであった。



 5万の大軍を率いて黄巾賊の正規兵と戦っていた盧植軍は苦戦を強いられていた。

 盧植が長机の上に凸型の駒を置いて作戦を考えていると、盧植のもとに城の門を護っている兵の1人がやってきた。

 兵が言うには劉備という若者が恩師である盧植先生を訪ねて来たとのことだった。


「劉備玄徳・・・劉備玄徳・・・ああっ!あの故郷にいた腹黒小僧か!思い出した!思い出した!あれから、もう10年前も経っているから、立派な腹黒青年になっているだろう!ここに通せ!」


「はっ!」


 兵が門へと引き返してしばらくすると、関羽と張飛と言う化物を連れた劉備が盧植のもとに現れた。

 立派に成長した劉備の姿を見た盧植は声をあげた。


「おおっ!やはりあの劉備の小僧か!大きくなったな!」


「盧植先生。お久しぶりです。またお会いできてうれしく思います。」


 そう言って劉備は盧植に礼をした。


「昔の恩を忘れずに助けに来てくれたこと感謝する。」


「ありがとうございます。では我ら義勇兵たちも盧植先生の軍に参加して戦わせて頂きます。」


「義勇兵たち?お主たち3人だけではないのか?」


 盧植は劉備の後ろに立っていた関羽と張飛をチラリと見て劉備に尋ねた。


「いえ、私の後ろにいます関羽と張飛の2人だけではなく。我らには500人余りの義勇兵がいます。」


「500人!500人も連れて来てくれたのか!!」


「ええ。村で義勇兵を募りましたところ、それだけの人数が私のもとに集まりました。」


 劉備が村で義勇兵を募っただけでも驚きなのに、500人もの義勇兵を集めたとも言うのだ。盧植は大変驚いた。


「劉備よ。私はお主がここまで立派に成長してくれたことを嬉しく思うぞ。」


「ありがとうございます。では我ら義勇兵も戦いに参加いたします。」


「うむ。では大いに活躍するがよい。」


 劉備は盧植と共に黄巾党の正規兵と戦うことになった。

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