(III)

第15話

 一台の馬車が街へと入城する。

 昨夜、夜盗に襲われ、ファルラたちが助けたあの馬車であった。

 街道を抜け、大広場の前で馬車は止まる。

 天使を見た御者でもある主は、教会へと消えていった。

 ……そして、消された。

「聞いたか、スィール」

 上半身半裸で鉄球を振り回し、教会へ来たばかりの男の顔をつぶした浅黒いマッチョのヤディオスは、相棒に問いかけた。

「あぁ、ヤディオス」

 年端のいかない赤毛のツインテールの少女は、さっきまでなかったはずの翼を背負っていた。まるで血のような、濁ったあかの鎧を身に付けて。

「さあ、飛んでいこうか」

 天使エンジェルであるはずのスィールは、不敵な笑みをたたえていた。

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