三節:菖蒲高等学校

 夕陽の射す揺れる電車内。

『次は琴平市、次は琴平市です。乗り換えの際は――』

 聞こえるアナウンスからしばらくし、電車が止まった。

 出る人に入る人。車内のひと気は徐々に疎らになり、今では大の字で床に寝れるほどの空間が開けていた。

 麻祁と龍麻は椅子に座り、菖蒲高等学校がある葛城市のアナウンスを待つ。

 顔を下に向け、何かを考えている龍麻。その横にはザックが一つ置かれ、更にその横には、麻祁の姿があった。

 携帯を取り出し、頻りに親指を動かしている。

 ふと、龍麻が目を横に向け、麻祁の全身を見回すように、上から下へと視線を動かした。今、目に入っているその姿は龍麻にとっては異様なものだった。

 灰色のスーツ姿にポニーテールの髪型、そしてメガネと背中には黄色のザック。それは今まで見た事がない服装の組み合わせだった。

 椚高に立ち寄った際、入り口の門前で待っていた龍麻の前に、麻祁がこの姿で帰ってきた。

「行こう」

 麻祁が一言。しかし、意図も読めず、突然変わった姿に龍麻の足は納得が出来ず、その場所から踏み出せないでいた。

「……なんだよその格好」

 問う龍麻の言葉に、麻祁は表情を変えずに答える。

「スーツ」

「見れば分かるよ。なんでそんなの着てるんだって話!」

「…………」

 メガネのブリッジを上げ、じっと龍麻の顔を見る。

 その異様な気迫に龍麻の体が押される。

「な、なんだよ」

「時間ないよ」

「時間ないって……ちょ、ちょっと!」

 麻祁が手にしていたザックを龍麻へと渡し、駅へと向かい坂道を下り始める。

 揺れる背中を呼び止めようと声を掛けるも、麻祁の足は止まることが無かった。

「なに始めるつもりなんだ……」

 過ぎる不安を覚えるも、龍麻にはどうする事も出来ず、しぶしぶ手にしていたザックを背負っては、麻祁の後を追うしかなかった。

 そして今、麻祁は携帯を手に持ち、忙しく指を動かしている。電車に乗ってから、その行動を変えていない。

 龍麻はしばらくその動きを遠くから眺めていた。本当なら真横から携帯の画面を覗きたい所だが、ちょうどザックが邪魔をしてハッキリとは見えない。

 なんとか見ようと首を伸ばす。そして、龍麻の目にある画像が入ってきた時、ふと言葉が漏れた。

「菖蒲高……」

 その言葉に麻祁が返す。

「そうだよ。事前に調べておかないとな」

「はぁ……なんだよそれ」

 龍麻がため息を吐き、溶け込むように椅子へと背をもたれさせた。

「んなもん、調べてどうするんだ? 栞の場所なんて書いてないだろ?」

「事前に調べるものは調べておかないと迷ったどうする? 中が迷宮になっている可能性だってあるんだぞ」

「……あるわけないだろ、そんな事」

「それより、栞のいる場所は分かっているのか?」

「ああ、それなら多分、弓道部かな。まだ部活があるって言ってたし……それから場所見えない?」

「部活動の一覧表はあるが、場所までは書かれてないな。今全体図を見ているが、体育館と運動場やコートの数が多すぎて特定できない。さすがは部活を優先させて推薦している学校だ。上から見れば立派な軍用基地みたいだな」

「種目にもよるけど、大会って言葉があるだけで、この高校の名前が必ず出てくるからな……県大会だとほとんどが優勝か準優勝のどっちかだし」

「強さの秘密には必ず何かある。薬物投与を行ってるかもしれん」

「へ、変なこと言うなよ! そんなことしてるわけないだろ!?」

「栞は弓道、紗希は何を?」

「陸上。確か短距離走とか言ってたかな……走るのにも色々分野ってのがあるとは聞いたけど……」

「時間があるならそちらにも言ってみるか。挨拶しないといけないし」

「挨拶って……そんな格好だと余計におかしいだろ? 制服なら転校生でいけるけど……スーツって……どう説明するんだよ」

「これが私服とでも言えばいいだろ。あとは家に帰った後に母親がなんとか言ってくれるさ。あっちでの印象は悪くなかったんだしな」

「上手くいくのかよそれで……はぁ……なんでゴム渡すだけでこんな事に……あーあー」

 龍麻が顔を上げ、吐いたため息を空へと噴き上げる。

「そういえば、そのゴム。随分色が落ちていたが、かなり古いものなのか?」

「えぇ? ゴム? ああ、あれは小学校の時に俺があげたゴムだよ。結構昔なのに、よくもつよな……」

「ゴムを渡したのか」

 麻祁の目が携帯から龍麻の顔へと移る。じろっと見つめた後、再び携帯へと戻した。

「な、なんだよ……」

「まあ、人の趣味に私は何も言わない。好きにするといいさ」

「おいおい! 勝手に俺の趣味にするなよ! んなもん持ってたって使う程の髪もないだろ!? あれは近くにある神社のお祭りで取った景品、俺が持っていたものじゃない」

「的屋?」

「輪投げ」

「輪投げ? 輪投げでヘアゴム?」

「ハズレの中から一つ貰ったんだよ。……確か一つも入らなかったからって、小さな箱みたいなの出してきて、ここから好きなのをって……」

「……それでそれを渡したと」

「ヘアゴムなんて知らないから、最初腕に付けていたんだけど家に帰った時に母さんから、これはヘアゴム、って教えてもらったから、栞にあげたんだよ。小学校の時から髪が長かったし」

「小学校とは長いな。常に付けていたから色も落ちたのか」

「中学の時に、一回、新しいのを買う買わないの話になったんだけど、その時はこれでいいとか言って断っていたな。……なんか付け心地みたいなのってあるのか?」

「さあ、私は付けないから分からない」

 龍麻が麻祁の方へと顔を向ける。そこには長い銀髪を後ろで結んだ事により、出来上がっていたポニーテールが目に入ってきた。

「……その髪留めてるのなんだよ?」

「あ? ああ、これはゴム。これかピンがないと髪は留めれない」

「さっき付けないって……」

「普段は付けないからな。付け心地なんて毎日ぐらい付けてないと分からないだろ。まあ、合うか合わないかは本人次第だから知らないが、長年使い続けているって事は、それだけそのヘアゴムに思い入れがあるって事だよ。早く渡すべきだ」

「思い入れか……」

 二人の背中を射す夕陽が強さを増し、電車内を染める。

『次は葛城市、葛――』

――――――――――――

 駅から歩き、住宅街とは反対の木々が茂る丘の方へと歩いていく。

「ええっと……こっちであってたかな」

 ザックを背負った龍麻が辺りを見渡し、目的の場所を探す。しかし、木々と正面に伸びる道以外は何もない。

「本当にこっちで合ってるのか? 案内標識や地図も見ず歩いて来てるが」

「確かこっちのはずなんだけどな……。一回どんな学校か栞と見に来たから間違いないとは思うんだけど……」

 歩けど変わる事のない景色に、徐々に心が不安になり、龍麻の足取りも自然と落ち始める。

「あれ……見えないな……」

 一人悩む龍麻の横を、麻祁が何食わぬ顔で通り過ぎた。

 迷いも見せず先を行く背中に龍麻が声をかける。

「って、そっちで合ってるのか?」

「さっき地図を見てた。もう少しで着くはずだ」

「……なんだよそれ、やっぱ合ってたのか」

 しばらく歩くと、目の前に道路が現れた。

 二人の足を止める川のようにそれは横切り、その向かい側の右には少し古びたような塀が並んでいる。

 道を渡り、塀に導かれるように歩くと右側に開けた校門が現れた。塀には【菖蒲高等学校】と書かれた銘板が付けられている。

 校内には空を覆うぐらいの葉の膨らませた木々が植えられ、その奥には立派な校舎が建っていた。

 龍麻はその大きさに一瞬圧倒されるも、中へ入ろうと足を進める。――しかし、その一歩をある言葉が止めた。

「ここから先は菖蒲高の生徒、もしくは職員の関係者以外立ち入り禁止だ」

 前から聞こえる、深みのある声。

 龍麻がその声を主に顔を向ける。そこには一人の男が立っていた。

 灰のスーツ姿。如何にも体育教師と見える顔つきと太いまゆ毛。ガタイも大きく、その見た目はまるで熊のようだ。

 怒っているわけでもないのに、正面から見られるだけで感じるその異様な空気感に、龍麻が一瞬、圧された。

「……あ、あの」

 どのような言葉を掛けていいのか分からずに戸惑っていると、その様子を腕を組んではじっと見ていた男の方から問い掛けてきた。

「その制服は天渡三枝だな。なんの用事でここへ?」

「あの……し、しお――久柳栞に渡すものがあって……」

「久柳栞? ……弓道部か」

 まるで不審者を問い詰めるかのような空気に、龍麻は怯まずに答えた。

「栞の弟で忘れ物を届けようと思って……その……」

 少しだけ開けられる間。男はじっと龍麻から目を逸らさず、そして――右手を差し出してきた。

「それなら俺が渡しておこう」

「え……」

 龍麻の視線が差し出された手へと向けられる。

 ゴツゴツとした岩のような右手。そこに物を乗せると粉々に砕かれそうにも見える。

 渡していいのかどうかも分からず、一人困る龍麻が麻祁の方へと顔を向けた。

 そこにはガードレールにもたれ掛かり、どこかに電話をしている麻祁の姿があった。

 声もかけれない状況に更に悩む龍麻は、顔を戻し、ポケットに手を入れてゴムを掴んだ。

 握り締めたそれを差し出そうと手をポケットから出す――。

「三島先生!」

 突然男の後ろから別の男性の声が響いた。

 校舎からスーツ姿の男性が現れ、三島と呼んだ右手を差し出す男の元へと走ってくる。

「先ほど電話がありまして、今度行なわれる県大会の話に関して連盟側からお話があると……」

「大会ですか? …………」

 龍麻に視線を向けた後、戻す。

「わかりました。……すみませんが、どうやらこの子が久柳栞に渡したい物があるらしいので、代わりに受け取って渡してくれませんか?」

「久柳栞……?」

「弓道部のです。清水先生が知っていると思うので渡してください」

「あ、わ、わかりました」

 男が頷くと、三島は大きい体を身軽に翻し、校舎へと走っていった。

 残された龍麻と新しく現れた別の先生。

 少しばかり頼りなさそうな雰囲気を出すその先生が、龍麻の顔を見つめ、

「ええーっと、それじゃ何か渡すものがあったって……」

手を差し伸ばした。

 だが、その途中、横から麻祁が割り込んできた。

「すみません」

 ふと呼びかけられた頼りなさそうな先生が麻祁の方へと向く。

 突然現れたスーツ姿の女性に少しばかり困った表情を浮かべる。

「え、えーっとなんでしょうか?」

「すみません、この学校の先生でしょうか?」 

「そうですよ。あなたは……」

「あの、すみません。実はさっきそこの角で女の子がケガをしてまして、多分ここの生徒さんじゃないかと思ったんですけど……」

「怪我ですか!? ど、どこで!?」

「そこの角です」

 麻祁が先ほど二人で通った道の奥を指す。

「多分動けない様子だったから、先生を呼んできてくれって……、一応様子を見に向かった方がいいかと……」

「わ、わかりました。……そ、それじゃ少し待っててくれるかな」

 頼りなさそうな先生が龍麻にそう声を掛けると、そのまま麻祁の言われた通り、塀の角に向かい走っていった。

 その後ろ姿を少しだけ二人で見た後、麻祁が校舎の方へと振り返る。

「二人ともちょろいものだ」

 冷たく突き離すような口調でそう言った後、校舎に向かい歩き出す。

「まさか、さっきの電話も……」

「ああ、頼んで掛けてもらった、邪魔だったからな。しばらくは時間が稼げる。ああでもしないと骨になるまで自分の手で渡せないぞ?」

「電話って……どうやって電話番号が?」

「調べればいくらでも出てくる。違法じゃない限り登録はされているからな、さっき電車でも調べた」

「でも、あの校門にいた熊のような先生は呼べないだろ?」

「あれも調べれば出てくる。そもそもここの高校の方針と仕組みが分かってないようだな。この高校は部活を優先させた運動特化の場所だ。以前から噂などで、練習をしている姿を見せない為に部外者の侵入は禁止とされているんだ。そんな場所に他校の制服姿でフラフラとやって来て、弟です。なんて突然言う奴なんか入れるわけがないだろ」

「そ、そんなの俺が知るわけないだろ!? 栞からも聞いてなかったんだし!」

「収集不足なんだよ。情報なんて集めればいくらで聞こえてくる。電話でもかけておけば良かったのに」

「んなこと言われても、学校まで来るとは思わなかったし……それじゃ、そのメガネとスーツ姿は入るために?」

「スーツでも入れてはくれないだろ、部外者禁止なんだから。これは入った時に身元がバレないようにする為のカモフラージュだよ。そんな他校の制服で来てたら、身元がバレる」

「な、なんだよそれ! それなら俺も言ってくれればいいのに! そしたら着替えたのに……」

 校舎に入ると、目の前に靴箱の列が広がる。二人は来客用の靴箱を探す。しかし、その場所にはなかった為、二人は外に出て、職員室用の別の入り口を探し始めた。

「椚高の寮にはお前の部屋はないだろ? 私のは電話して急いで用意してもらったものだ。もし事前に侵入するなら、ちゃんと着替えも別の侵入路も用意する。今回は私にとっても想定外の事だ。ちょうどここの高校に関しては以前から興味があったから、そのついでだよ」

「だから母さんと話していた時、あれだけ乗り気だったのか……で、興味ってその何? どうして部活が強いとか?」

「それも関わってくる。さっきも言ったが、この高校には妙な噂が流れている。部外者は絶対に立ち入り禁止とされ、運送などの業者ですら決まったルートでしか通れないし、内部の様子も練習内容も秘密。そんな話を聞かされたら怪しさしか伝わってこないだろ」

「うーん、そうかな? 強い所だと練習方法も真似されたくないから、誰にも教えたくないだけだと思うんだけど……。それなら生徒に聞けばいいんじゃないか? 栞にだって聞けるし……」

「聞いて答えるなら別にそれで済むが、本人達は普通としか答えないかもしれない。現に、ここの卒業生にも話を聞いたが、これといって怪しい事をしている情報は入ってこなかった」

 校舎に沿って二人が歩く。外では部活をしている生徒の声が響き、時たま横をジャージ姿の男子生徒が走り過ぎて行く。

「それじゃ調べる必要なんてないだろ? 別に何もないんだし」

「私はこの目でそこを見ない限りは満足しない。それに最悪でも洗脳や催眠で記憶障害を起こしてから、薬物投与などを一部の生徒に行なっている可能性もある」

「……なんだよその考え方。普通に考えてもおかしいだろ? 洗脳とか薬とかって……」

「なら、もし大切な姉がそんな事をこっそりされていたとなったらどうする?」

「そ、そうなったら心配だけど……でもな……」

 夕陽の中をしばらく歩くと、少し広めの別の玄関が見えてきた。

 中に入ると、そこで働く職員の靴と、来客用の靴箱とスリッパが置かれていた。

「私の考えが異常でも構わないが、せっかく入れたんだ、私はこの辺りを歩いて調べてみる。龍麻は栞に会いに行くといい。確か弓道部はここから廊下を真っ直ぐ歩いて、その突き辺りを右に行った場所にあるはずだ。ちょっと背中をこっちに……」

 龍麻が背を向けると、麻祁がザックの中を探り始めた。

「真っ直ぐって……もし迷ったらどうすればいいんだよ。一緒に行かなくていいのか?」

「説明するだけなら私が居なくてもいいだろ。それにゴムも渡すだけなんだし。合流は私からそっちに行く。もし迷った場合はそこら辺の生徒に聞けばいい、教えてくれるだろ」

「もしさっきの先生とかに見つかった場合はどうするんだ?」

「その場合は事情を話せばいいだろ? つまみ出されるだけで、ゴムは問題なく栞の元に渡る――もう大丈夫だ」

 ザックの口を閉めた後、麻祁が龍麻の肩を数回叩いた。

 龍麻が振り返った時、自然と目が麻祁の右手へと移った。そこには、黒い何かの機械が握られていた。

「それなに?」

「これは護身用。ここには私の身内はいない、言い訳しても盾がない、今はただの不審者。もし、騒ぎか何かが起きたら、すぐにここから離れるように。合流は駅前で、何もなければ私から弓道部に向かう」

「おいおい大丈夫なのかよ……」

「私は問題ない、一人でも逃げる。それより早く向かった方がいい。せっかくここまで来たのに会わずに帰るなんて寂しいだろ?」

「寂しくはないけど……まあ、行ってみるよ」

「それじゃ、また後で」

 そう言いながら麻祁が奥へと向かい、真っ直ぐと伸びる廊下を歩き始めた。

 その後ろ姿は、どこからどう見ても学校の教員というより、どこかの会社員の姿だ。

 麻祁が角を曲がり消える。その姿を最後まで不安そうに見ていた龍麻は、ふと、ため息をついた。

――――――――――――

「あれ、どこに……?」

 角から戻るとそこには誰もいなかった。

 辺りを改めて見渡してみるも、やはり制服を着た男子生徒の姿はない。

 その時、校舎から三島が帰ってきた。

「すみません、御迷惑を……」

「いえいえ、それより早かったですね」

「どうやら私が着いた時には電話が切れたらしくって……リダイヤルしたら結局間違いだったようでした。……久柳の弟は?」

 三島が辺りを見渡す。

「私も探していたのですが、どうやら居なくなってしまって……」

「居なくなった?」

「ええ、少し待っていてと言ったのですが……もしかすると帰ったかもしれませんね。……そう言えば、三島先生、生徒の誰かが怪我をしたという話は聞きませんでしたか?」

「怪我? なんの話です?」

「三島先生が居なくなった後、スーツの女性に呼ばれまして、怪我している女子生徒がそこにいると聞いて向かったのですが、誰もおらず……」

 手を伸ばし、塀の角がある辺りを男が指差す。

 その指先に目を向けた後、三島は眉間に皺を寄せた。

「そんな話は聞いてません。女子生徒はいなかったのですか?」

「はい、急いで行ったのですが、誰も……。それに、戻ってみればその教えていただいた女性の方もいませんでした。……どこへ行ったのでしょうか?」

 ふと三島の頭の中で先ほどの光景が浮かび上がる。それは、先ほどの他校の生徒と話していた時に少しだけ視界に入った、携帯を弄りながらガードレールに寄り添うスーツ姿の女だった。

「まさかな……。臼井先生、この後何か予定は……?」

「いえ、何もありませんが……」

「それじゃすみませんが、少しの間この場所お願いできますか? 少し用事を思い出しまして……すぐに戻ってくるとは思いますが……」

「構いませんよ」

「すみません。それじゃお願いします」

 そう言うと、校舎に向かい三島が走り出した。

 その後ろ姿を、臼井と呼ばれた先生は見続け、訳も分からずに進んでいく状況にため息をついた。

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