二節:クエスト

 ヘリから降りた後、俺達は施設の中へと入った。

 ガラス扉の前には二人の警備員が立っていたが、何も言わずただジッと正面の一点だけを見つめていた。

 中に入り、辺りを見渡す。そこは病院の待合室だった。

 右側の広場には長椅子が幾つも置かれ、その奥にあるカウンターの上にある案内板がその場所を示している。椅子には白衣を着た数人が居座り、何かの資料を読んだり、はたまた立ち上がっては、どこかへと歩いていく。

 麻祁はすぐに左へと曲がり、近くにあるエレベーターへと乗った。俺もすぐに駆け込み、この場所の事を聞いてみた。

「この場所は? なんか病院みたいに見えるけど……」

「病院だよ。どこからどう見ても病院」

 表示された数字が四を指した時、ガタンという衝撃と共に音が鳴った。その後、ゆっくりと扉が開き、目の前に廊下が現れた。

 外に出た俺達は、今度は右へと曲がり、夕日が射し込む長い廊下を歩いた。

「ここは四つの村の中心にある総合病院だ。森の中にあるから一見そのようには見えないだろうが、一応村人の命に関わる仕事をしている。それに、結構いい医者や医療技術が上らしく、わざわざ噂を聞きつけて遠出から来ては受診、入院する人もいたとか。それだけ施設の備品は良好だったみたいだな」

 俺達の横を白衣を着た男女が何人も通り過ぎる。

「それじゃここにいる白衣を着た人達は病院の人達?」

「ん? 違うよ。ここにいるのは、私が雇った人達。この病院は三週間も前から潰れて、人は居なかった」

「潰れた? なんで? 結構人が沢山来てたんじゃないのか?」

「表で出された理由としては不明。突然、移転の準備を初めて、入院患者も含めて全員移動させたらしい。まあ、裏では相当ロクでもない事をしてたんだろうけどな」

 廊下に並べられた三つのソファー、その横にある木で作られた扉の前に立ち、麻祁がドアノブに手を掛けた。

 開かれる視界、そこには奇妙な空間が広がっていた。

 両端の壁にはガラス戸の本棚が聳え立ち、茶色の壁を作っていた。

 中央では、長机が中心を開けるように三つ置かれ、その上で大型のパソコンにあるキーボードを仕切り無しに女性が叩いている。三人いる女性の耳には小さなインカムらしきものが全員付けられている。

 その奥、それを見守るようにして置かれてい大型の机横に一人のスーツを着た男が立っていた。

 男は外にある夕日に染まる景色を眺め、カーテンを広げてはそれを隠し、こちらに振り返った。

「遅かったな」

 投げ捨ているように吐かれる男の言葉に、麻祁は軽く返事をし正面へと近づいた。

「準備は出来てるか?」

「防護服を含め準備は出来ている。これが内部図だ……」

 男が机に置かれたパソコンの前に麻祁を誘導する。

 麻祁は無言のままマウスを小刻みに何度も動かし、そして止めた。表情が少しだけ険しくなる。

「この光は信号か? まだ中にいるのか?」

 画面を指さし、麻祁が問う。俺は気になり、その画面を遠くから覗いてみた。

 緑の線に折り重なるように組まれる図形。……この施設の設計図なのだろう。画面端には、あの資料でも目にした緑に染まる通路が映されていた。

 その麻祁が指さす場所、そこには一つの光が点灯を繰り返していた。しかし、一部分だけではなかった。、上にも下にも、同じような光が各層で点灯を繰り返している。

「それなんだがな……」

 その続きを言いたくないのか、男の声が少しばかりくぐもる。

「俺からも頼みがある。序でも構わない、その点灯を繰り返す信号の場所まで向かって確認をしてきてくれないか?」

「確認?」

 ふと自然と漏れた言葉に、男が睨むような視線を向けてきた。俺は咄嗟に目を逸らす。

「ミイラ取りがミイラか?」

 鼻で笑うように放つ麻祁の皮肉に、男の表情は更に険しさを増した。

「まだ、ミイラになっている可能性はない」

「そりゃそうだ、なられたら私が困る。……で、所持品は?」

「通信機器に懐中電灯のみだ」

「それは助かる。面倒ごとの一つは排除できた。確認する信号の数は全部でいくつだ?」

「四つ。編成は二組一つで行動している。……今はバラバラだがな」

「……理由は?」

 麻祁が男の方に顔を向ける。

「考えられる可能性としては、自分の意志で今だ何かを探しているか、もしくは――誰かに操られているか」

「ここに映っているカメラの映像。そこにある緑のようなものの分析は済んでいるのか?」

「いや、それはまだだ。回収しようにもその回収する為に出て行った班が戻ってない。二次災害の恐れがあるから、誰も送ってはない」

 男の言葉に、麻祁が聞こえるような大きなため息を吐いた。

「はぁ……、聞いたか? 何がいるかも分からない、どれだけ危険かも知りえない、そんな場所に、どうぞ潜ってお探し下さい、だってよ。――まだネズミの方がマシじゃないのか?」

 少しばかりトーンを下げて放たれる麻祁の最期の言葉に、男が眉根を寄せた。

「とりあえず、現段階で分かることはあの資料に書いてあることが全てだな? 迷い込んだ班の人間は確認しておく。が、もし危険だと判断したら私は下がるいいな?」

「……ああ、分かっている。胸元にタグがある、それを回収してきてくれるだけでいい」

 男の言葉を最後に、麻祁はパソコンから離れ、ドアに向かい歩き出した。

「それじゃ行く。どこに準備を?」

「ここから左に曲がった西棟の一階に非常階段がある。そこで準備をしている、佐竹さん地図を」

「はい」

 男に呼ばれ中央の机でキーボードを打つ女性の一人が返事をした。麻祁はその女性に近づき、画面を覗く。

「エレベーターは?」

「電力は普及させたが稼働しない。地下と直接繋がっているから、何かの不具合が生じているようだ。面倒だが階段からしか道はない」

「分かった。行くぞ」

 麻祁の視線が合う。俺はすぐに背中を追った。

 ドアを抜け左に曲がり、夕日に染まる長い廊下を歩く。俺は、先ほど部屋にいた男の人の事について聞いてみた。

「あの男の人は?」

「あれは、私が雇った人間だ。仕事は依頼された場所を探索して、それの調査報告を雇い主に伝える仕事」

「それじゃ、あの資料とパソコンに映っていた建物の地図はあの人たちが?」

「ああ、それが仕事だから。依頼主の中にも最低限の情報しか提示しない所もある。理由としては内部の構造を知られて、その情報を他人に売られたら色々と困るから。例えば、ある企業がある物を回収して貰う為に施設の構造図を資料として受諾者に渡す。しかしその受諾した奴が、他の企業に情報として売り、その別企業が回収に向かうとしたらどうする? せっかく長い時間とお金を掛けて作り出した知恵を奪われるんだ、誰だってそれは阻止したい、だからそのリスクを最小限に抑える為に情報を制限するんだ」

「それだと迷ったりするから、誰も受ける人はいないんじゃないのか?」

「その分報酬は高く設定されている。条件が条件だ、高い報酬金を懸けて釣るんだよ。その報酬目当てに受ける人は少なからずいる。私もその一人として例外ではないからな」

「お金って……そんな危険な事をして死んだら終わりだろ……」

「そのリスクを避ける為に、あの男を雇ったんだろ? まあ、今回は地図だけしか出来なかったが、一応何か危険なモノが無いかを見るための探りとしての役目も兼ねている」

「やっぱ何かいるのか……」

 頭の中に浮かび上がるあの坑道での映像。またあんな感じのバカデカい生物などがウヨウヨいると考えただけで、寒気がしてくる。

「多少なり……はな。施設全体が毒物で埋もれていたなら、まあほとんどの生物は死滅しているだろうが、情報を制限して提示してコソコソとする連中だぞ? 何を研究していたのかなんてマトモなものだとは思えない。以前もそうだったしな」

「以前?」

「今回に似たケースだ。ある施設にある情報を回収する依頼があったんだ。それを受けて、施設内の地図作成を依頼したんだ。結果、調査隊の数人が行方知れず。で、仕方なく私が入ったら、なんとそいつらがこのか弱い私に危害を加えようとしてきたわけだ」

 麻祁が左手を軽く払うように動かす。

「更に酷いもんで、その調査隊が手にした道具が身体の一部となってそれを攻撃手段の一つとして振るってくるんだ。ロクなもんじゃないだろ?」

 麻祁の言葉に、ふと先程の記憶が思い浮かんだ。それはあの男の人に言っていた言葉。――所持品。たぶんそういう経験があったから聞いたのだろう。

――もしかして、その調査隊ってのも今さっき会った人達だったんじゃ……。

「それって結局何が原因だったんだ?」

「水」

「みず? ……みずって……あの水道水とかの?」

「大まかにいえばそれだが、それより厄介なモノ。何かと同化を求めてくる気持ち悪い液体だよ。血液に入り込んだり、近くのモノになんでも結合するんだ。これに関しても資料にあるから目を通せばいい、また今度見せてやる」

 その言葉に俺は軽く返事をした。あまり読む気にはならないが……。

「まあ、今回探す奴は、所持品に武器になるようなモノを持ってないから襲われても安心だな」

「お、襲ってくるのか!?」

「その可能性は捨てきれないだろ? もし脳が何かに浸食されて、攻撃性を高めていたり、防衛や生存本能が活性化されていたら、間違いなく襲ってくる。なんせある意味、小さなパレットみたいなものだからな。一色に染まった色の中に、目新しい別の色が入り込んで来たらぐちょぐちょに入り混じって違和感を無くしたくなるだろ?」

「俺達は違和感の一つなのか……」

「その世界ではな」

 ふっ、と麻祁が軽く鼻で笑う。

 少し暗くなる夕焼けの廊下を歩き、そしてある扉の前に辿り着き、扉を開けた。そこには少し大きめの空間が広がっていた。

 白い壁に囲まれた部屋には、ガスマスクを付けた全身真っ白の人が数人いた。吊るされた防具服に小さなボンベ、それにパソコン等、色々な機材の前を行き来を繰り返し、何かの作業をしている。

 奥には扉が一枚立ちふさがり、その周りを透明のカバーが覆っている。

 麻祁は近くで作業をしていた一人のガスマスクに話しかけた。異様な形状のマスクから表情は見れぬものの、覗く視線からは、突然の呼びかけに何事かと、きょとんとしている様子だけは伺える。

「ここが西棟の非常階段前か?」

 その言葉にガスマスクが奥へと案内してくれた。

 作業している人達を抜け、カバーの前で立ち止まる。その横には長机が置かれ、防護服が二着とその横にはボンベが二本置かれていた。

 案内したガスマスクは近くにいた何も装備を付けてない一人の男に声を掛けた。

 男はこちらに気づき、麻祁の前に立った。

 引き締まった身体に見合った顔。身長は俺達を遥かに超え、少し見上げる形で話を始める。

「指定された物は用意できている」

 親指を立て、男が後ろに見える防護服を指す。その行動に麻祁は何も言わずに軽く首を振り、置かれた防具服の前に立ち、手に取った。

「酸素ボンベの時間は?」

「約一時間から半まで」

「短いな」

「呼吸を調整できるなら倍はいく」

 麻祁がふと後ろを向き、俺の方を見てきた。数十秒ぐらい見た後、視線を戻す。

「あの男だと何秒?」

 麻祁の言葉に、今度は横に立っていた体格のいい男が視線を向けてくる。その表情は何かを考えているようではなく、単に無表情だ。

「……半時間、それ以下か」

「だろうね。おい、早く着替えるぞ、こっちに来い」

 男の言葉に麻祁は鼻で笑うように答え、俺を呼んだ。すぐさま駆け寄り、もう一つの防具服の前に立った。

「これに着替えて今から、地下へと入る。中はどうなってるか分からない、もし細菌などが蔓延している可能性もあるから、今回はこのボンベを背負っていくぞ。ボンベの容量から酸素の時間は約一時間半ぐらいだ。頼む」

 説明を終えた後、麻祁が横に立つ男に声を掛けた。

 男は軽く返事をした後、筋肉で引き締まった大きな腕を振るい、周りにいた人たちを集め、何かを指示し始めた。

 周囲が一気に慌ただしくなり、さまざまの音が鳴る。その状況に俺は何もできない……以前に、気にしている場合ではなかった。それよりもさっきの言葉が違和感として頭の中で引っ掛かっていた。

――半時間。

 それはさっき男が俺を見て口にした言葉。麻祁の説明ではボンベの容量から一時間半ぐらいはもつと言っていた。なのに俺の場合はその半分しかもたないとか……。普通に息をしてるだけじゃダメなのだろうか? 何か特別の呼吸法でもあるのか?

「あ、あの……さっき言ってたことなんだが……俺のボンベ半時間ってどういうこと?」

 麻祁は背中に背負っていたザックを机に降ろし、中を確認している。

「単純にボンベの中にある酸素の量は限られている。だが、それを吸う人間が激しい呼吸を行えば行うほど、すぐにその量が減ってしまうという事だ。例えるならケースの中にある限られた食料を消費する際、細身と太身では消費量が変わってくる」

「……でも、俺と麻祁とじゃ比べてみてもそれ程変わりは……」

「問題はそこじゃない、精神力の方だよ。極端な話、もし細い奴が大食いで、太い奴が小食なら食うペースが変わってくるだろ? そりゃ運動での熱量とか色々あるが、体格関係なく人によって変わってくるって話だ。お前はまだこういう事に慣れてないから、すぐにパニックになる可能性もある。そうなるとどれだけボンベの容量があったとしてもすぐに切れて酸欠状態に陥ってバッタンキューだ」

「マスクを脱げばいいんじゃないのか? 苦しくなったら、こうやって」

 口元に手を当て、マスクを外す素振りを見せる。

「……やってみればいい。何が漂っているかも分からない場所でマスクを脱ぐ勇気なんて私にはない。もし脱ぐなら、お前が今後どのように変容していくか、隔離施設にぶち込んで四六時中見守ってやる。食料も風呂も自由に入れるから、夢のヒモ生活が送れるぞ」

「…………いや、いいよ。絶対に外さない……」

「一応呼吸法を整える方法はある」

「えっ!? そうなのか? ど、どうやるんだ?」

 麻祁はザックから手を放し、顔を正面に向け、両腕を真っ直ぐと前へ伸ばした。

「いいか、今から教えるから真似して」

 麻祁の言われるがまま、俺は同じ動きを真似してみた。

「まずは深呼吸。鼻で息を吸って、口からゆっくりと吐く。その際、前に突き出した両腕を天高く上げて、左右に広げる。これを数回繰り返す」

 その言葉の通り、突き出した両腕を天高く上げ、左右に広げた。

「その後、頭の中で平和を考えるんだ。花畑が良い、一面広がる黄色のお花に、ゆったりと飛び交う蝶々」

 暗闇の中、ふと一面黄色い花が植えられている映像が浮かび上がる。果てしなく続くその花畑に白や黄色の蝶々が何匹も飛んでいる。

「はい、終わり」

「……えっ?」

 突然の終了の言葉に、俺は目を見開き、すぐに麻祁の方へと顔を向けた。

「終わり?」

「はい、終わりです」

 突っ切るように放つ言葉。その後、麻祁が防護服に着替え始めた。

「これでボンベの時間伸びるのか?」

「伸びる伸びる、一時間半が三時間になったよ」

 少し砕けたように語られる口調に、内心納得できぬももの、麻祁は動きを止めず黙々と着替えるその姿から、しぶしぶと俺も防護服に着替えることにした。

「まぁ、精神的な問題だ。何かを考えてパニックになるぐらいなら、別の事を一色で考えて心を落ち着かせた方がいいって事だ。なあ、あれで二時間ぐらい伸びるよな?」

 防具服を着替える中、麻祁は視線を動かさず声を掛ける。それは俺にではなく、横で俺達の動きを見守る男に向けられた言葉だった。

「…………」

 男は何も答えない。

「彼、シャイなんだ」

 麻祁の奇妙なフォローに、自然と口元からため息が漏れた。

「よし、着替えたか? ちょっと回ってみろ」

 麻祁に言われるがまま、その場で回る。部屋が涼しいからだろうが、通気性はないもののあまり暑くはない、が、少し動きにくい……。

「大丈夫そうだな?」

「ああ、見ていたが問題はない」

 麻祁の言葉に男が答える。

「よしよし、それじゃこれを付けろ」

 伸ばされる手。俺が手を広げると、そこには小さなイヤホンみたいなものが置かれた。

「それは通信するためのやつだ。防護服からだと声が聞き取りにくくなる場合がある。それに、もし身体に異変を感じた時はすぐに報告して対応することも可能になる」

「耳に装着後、耳を押えれば上部との通信も可能になる。もし場所を聞きたい場合は押して話してみろ」

 男に言われた通りに、俺と麻祁はイヤホンを付けた後、耳を押した。

「――はい」

 透き通るような女性の声が耳元から聞こえる。

「この場所は?」

「ツーエーの西棟一階の非常階段前です」

「おーけーおーけー。それじゃナビよろしく」

「はい」

 麻祁が手を放す。

「防護服の上からでも問題はないのか? もし接触してしまった手でマスク横に触れた場合、その隙間から侵入する恐れがあるんじゃないのか?」

「一人で着衣可能にはなっているが、そのような落ち度などない」

「それは頼もしくて……よし、これを背負うぞ」

 麻祁がすたすたとボンベの所まで歩く。同じく俺もボンベの近くまで行くと、両手を広げて、後ろに振り向くように言われ振り返った。

「重いぞ」

「……ぐおッ!!」

 突然背中に圧し掛かる重量。その重みはまるで大人一人を背負っているような感じだ。気を抜くと腰の重心が自然と前のめりへとなっていく。

 麻祁の方へと首を向けてみると、男に手伝ってもらいボンベを背負っていた。しかし、その表情に変化はない。

「お、重たくないのか……?」

「重たいよ。もっと軽くできなかったのか?」

「現段階じゃそれが限界だな。軽量化させるにはもっと時間がいる」

「ああ、なんて悲しくもこんなにも苦労する時代に生まれてしまったのか。まあ、その為に毎日重たいもの持っていたんだ、問題ないだろ? さあ、これをつけろ」

 麻祁が俺の横に手を伸ばし、何かを顔にかぶせて来た。

 頭はカバーに包まれ、視界が一気に狭まった。透明のゴーグルが間を挟む形になっている。

「それで終いだ」

 男に手伝ってもらいながら、麻祁もマスクを着ける。あの睨むような細目の表情も隠れ、少し抜けたような黒色の顔へと変わる。

「捜索時間を一時間半を目処とする。つまり、休む暇はない、行くぞ」

 イヤホンを通し、麻祁の声が耳元から聞こえる。俺は首を軽く振り、返事をした。

 その反応を見た後、麻祁が振り返る。その時、ふと男から何かの長い黒い棒が渡され、それを手にした。

 それが何なのか一瞬気になるも、麻祁が透明のカバーに包まれたドアに向かい歩き出した。

 カバーを抜け、ドアノブに手を掛ける。銀色のドアが重々しく開かれた。

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