第57話 ゲーム内の事じゃん!
ヒカリさんの発した言葉に、その場にいた一同はちょっとだけだが衝撃を受けていたかもしれない。それまでの
「あ、あのヒカリさん?」
一番最初に反応したのは
「あームカつく!」
だからな。一体何がどうなっているのか見当もつかないだろう。でもまあ、利久以外のメンバーはこっちが本来の彼女なんだろうとは思ったんじゃないだろうか?今までが猫を被っていただけでさ。
「あの、ムカついてんのはこっちなんだけど?」
そんな事を考えていると、里奈がそう発言していた。物凄い冷めた表情でキーボードを打ち込んでいる姿が想像できるぜ・・・。
「はあ?そもそもあんたが余計な事しなきゃ先輩をゲームから離れさせることが出来たかもしれないのに、どうしてくれるのよ!」
「あんた馬鹿なの?なんであんたの下らない計画の為に他人を巻き込んでんのよ!やるなら他人に迷惑掛けずに勝手に自爆しときなさいよ!」
「私の邪魔してきたのあんた達じゃない!そっちこそどうしてくれんのよ!」
「あんた何言ってんの?意味不明なんだけど」
姉貴じゃないが、俺にはもう、ヒカリさんが一体何を言っているのかまったくわからなかった。この人の話している言葉はそもそも日本語か?ってくらい意味不明だ。
しかしそんな意味不明なヒカリさんの暴言にも、ど正論で返答していく里奈。
「勝手にやってきたのはあんたの方なの。あんたはお呼ばれして無いの。わかりますかー?」
しかも言葉の
「はいはい、そこまでだよ二人とも~」
二人の言い争いが頂点に達しようとい時だった。団長がいつもの軽い感じで会話に割って入った。
「話のいきさつは大体わかった。要はヒカリさんはその先輩をゲームから引き離そうと、僕らのギルドをかき回しに来たってことかな?」
「はー!?」
団長のその言葉に声を上げたのは利久だった。いや、こいつはマジでヒカリさんの事信用してたんだな。いや、確かに正義感の強い奴ではあるけど、ちっとは疑えよ・・・。
そして当のヒカリさん本人は沈黙したままだ。まあこれだけ詳細に話されたうえ証拠もあるんじゃ、もう何を言っても信じてもらえないよな。
「エリナちゃんが音声データの証拠を持っている以上、これ以上は言い逃れは出来ないよ?悪いけど君には自由同盟を脱退してもらうから」
団長にしてはかなり突き放した表現でヒカリさんにそう告げていた。まあ、そりゃそうだよなとしか言えねえわ。しかしそう告げられたヒカリさんの反応は意外なものだった。
「あれー?たったそれだけで大丈夫なのー?」
「どういう意味かな?」
おれもちょっと彼女の言っている意味が分からなかった。
「このまま脱退させられたら、私あることないこと言いふらしちゃうかもw」
「おい、あんた!」
「やだこわーい。ギルド員に脅されたも追加しちゃおうかな~w」
ヒカリさんは俺の言葉におどけて返してきた。
「つまり、このまま自由同盟をクビにされたらうちのギルドの悪口を言いふらす、そういうことかい?」
「ビンゴ☆」
おいおい、この人アホなのか?音声データもあり職場ばれも身元バレもしてんだぞ・・・。なんでその状況で堂々と脅すようなまねができるんだ?
「君は自分の立場をわかっているのかな?さっき音声データもある事は伝えたよね?それにこのチャット
「音声データなんか知らないって言い張るし、ゲーム画面なんか合成できるじゃん!」
まじかよ!ここまできてすっとぼけるつもりか?そんなの絶対無理だって俺にだってわかるぞ・・・。
「なるほど。じゃあ例えば君の言い分が認められて合成だと判断されたとしよう。ならばブラックアースの運営会社に情報開示請求を行うだけだよ」
「はあ!?あんた馬鹿じゃね?たかがゲームのいざこざでそこまですんの!?」
え?団長マジでそこまでするつもりなの?
「先輩、団長本気でしょうか?」
スカイポで通話中の燈色が俺にそう尋ねてきたが、俺も「わからん」と返すしかなかった。
「これをゲーム内の問題だと捉えてる時点で馬鹿なのは君の方だろう」
「は!?だってゲーム内の事じゃん!」
俺もちょっとよくわからなかった。いわゆるゲームプレイヤー同士のもめ事とは違うのだろうか?確かにきっかけはリアルでの事だが、結局はゲーム内でのいざこざに思える。
「君、ライデンとダーク君が学校で喧嘩したのは知っているよね?」
「ああ、この前言ってたかもね。それが何よ?」
ヒカリさんじゃないがそれがどうしたんだろう?等と俺も思ってしまった。しかし団長は構わずに話をつづけた。
「君は、ゲーム外での「私怨」もしくは「個人的事情」をゲーム内に持ち込み、ブラックアース掲示板などの「外部サイト」で誹謗中傷の種を故意にまいてメンバーを苦悩させただけでなく、未成年のギルドメンバーを唆して暴力事件にまで発展させてるんだ」
団長の言葉を聞いた瞬間、一瞬だが、時間が止まったような感覚に襲われた。しかししばらく経ってからヒカリさんが反応した。
「ちょっと、そんな大げさなわけないじゃない!」
「君は未成年であるダーク君の、やってもいない悪事をライデンに吹き込み、二人を仲たがいさせた。ゲームだけじゃなく学校での暴力にも繋がった原因だ。僕は未成年の子供達をお預かりしている身だから、保護者への報告等も辞さないつもりだ。もちろん君の所属先にもね」
「ちょっと待ってよ!事務所に報告されたら困る!」
団長の言葉を聞くや否や、慌てたようにヒカリさんが打ち込む。つーか事務所ってなんだ?
「そんな大げさな事じゃないでしょ!?暴力って言ったって、子供同士の喧嘩じゃん!」
「違うね。明らかに君の故意の誹謗中傷が原因だ。ダーク君が気にもしてないから良かったものの、これが原因で学校を辞めたりしていたらどうするつもりだったんだい?」
団長のその言葉にしばらくの間、ヒカリさんからの返信は無かった。
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