第35話 激闘!ブラックアウト戦!
「お前、なんでこんなとこにいるんだよ!」
「いやあ、何か面白そうだったからさあw」
俺が文句を言ってるのは、ギルド「ブラックアウト」(以下BO)の剣士「エバーラング」だ。
俺達がクリスタルを奪取してた時に
BOの奴らは宣戦布告すると同時に、やはりウォールを目指していた他のギルドをライン内で
他ギルドの奴らも混ざっての混戦になれば、俺達にも少しはチャンスがあったんだろうが、レベルの高い剣士や僧侶で門を防衛しているため、一度はライン外に排除された他ギルドの奴らがウォールを目指そうとしても、戦闘力の高い門防衛の兵士を倒すことが出来ず、文字通り「門前払い」されていた。
そしてその間に、俺達自由同盟のメンバーは、バトル慣れしたBOの連中に一網打尽にされ、あっという間にクリスタルを
そして本当に凄かったのはここからだった。なんと、そこから残り時間30分の間、俺達はたったの1度も要塞内に侵入することができなかった。BOの門防衛が硬すぎて、誰ひとりとして門を「抜く」事が出来なかったんだよ。
もちろん俺達もただ闇雲に攻撃してただけじゃない。唯一、大規模戦の経験のある千隼さんがまとめ役になって、千隼さんが指定するBOの兵士を
千隼さんが指揮し始めてからは、最前列の敵兵士を何回も帰還させたほど、俺達は頑張ったと思う。けど、そいつがいなくなるとすぐ後方の奴が前に一列ずれてきて、そいつを攻撃している間に、さっき帰還した奴が、同じ列の最後方に付く。ずーっとこれの繰り返しだった。
つまり、圧倒的に火力が足りなかったんだよな。人数的にはこちらに圧倒的に分があったと思う。それでも、すげえ余裕があったように見えたもん、相手のギルド。
そして「ブラックアウトが自由同盟に勝利しました」というアナウンスと共に、今回のコボルト要塞バトルが終了した。まあ、制限時間が過ぎちゃったんだな。
あーすっげえ楽しかった!
え?悔しかったの間違いじゃないのかって?そりゃもちろん悔しいさ!ボロ負けしたし、一回も門を抜けなかったしね。
けどさ?俺達みたいな寄せ集めのバトルギルド相手に、ガッチガチに門の方業を固めてさ、一切の手抜き無しのガチバトルを仕掛けてきたんだぜ?超大手って言われるブラックアウトがだよ?
しかも、千隼さんも昔やってたバトル好きの血が騒いだのか、すげえ張り切って仕切ってくれて、まさかあそこまで本格的にバトル出来るとは思わなかったよ。
他ギルドの奴も相当楽しかったのか、バトル終了と同時にお互い労い合ってたしな。BOの連中も、終了と同時におつかれー!またやろうぜ!って言いながら、どっかに帰還して行ってた。
で、コボルト要塞の門辺りで皆で談笑してたら、ブラックアウトの奴がこっちに近づいてきたんだ。名前は「エバーラング」。俺のゲーム内での友人の一人だった。
で、冒頭の掛け合いに繋がるわけ。と言うか、BOが大手のバトルギルドってのは聞いてたけど、あそこまで凄いとは知らなかった。
ダーク「どういう経緯があったら、あんな本格バトルをやるようなギルドがコボルト要塞戦に参加するんだよ」
エバー「えっとね・・・」
エバーラングが言うには、チャット欄に「わんにゃん王国が自由同盟に勝利しました」ってログが流れた時、コボルト要塞戦の見学に行くかって話がBOのチャットで出てたらしい。
で、エバーが「自由同盟は友達の居るギルドなんだよねー」って話をしたら、じゃあ俺らも要塞戦に参加するか!って話になって、参加したい奴だけ募って飛んできたらしい。
ダーク「準備も何も無しに飛んできてあれかよ・・・・」
エバー「そりゃ慣れてるしな。でも、そっちも途中から急に統制とれだしたよな。千隼さんだっけ?あんた指揮執ってたみたいだけど、経験者なの?」
千隼「あら私?そうね、以前は要塞戦で指揮を執ることも多かったわね」
エバー「あーやっぱり。指示の仕方が付け焼き刃にしては的確すぎると思ってたんだよ。陣形の指示も?」
千隼「そそ」
そりゃあ千隼さん、シャイニングナイト創設者だからな。そんじゃそこらのバトル経験者とはわけが違うだろう。
エバー「なるほどねえ。おかげで途中から気が抜けなかったよw」
ダーク「ええ!?余裕あるように見えたぞ」
エバー「アホか。あんな集中攻撃されたら、HPなんて簡単に蒸発しちまうよ」
あー確かにな。こっちからはBOの兵士のHPバーは見えなかったけど、俺がBOから集中攻撃受けた時は自分のHPバーが一瞬で0近くに落ちたからなあ。あれは死んだと思ったね。
エバー「それとそっちのヒーラーの人、エリナさん?もしかして漆黒シリーズ装備してる?」
エリナ「ええ!?よくわかったわね・・・」
エバー「あーやっぱり!だって、他の僧侶が交代でMP回復してたのに、あんた全然休憩なしにヒール連発してたでしょ。見ててすぐわかったよ」
へえ、やっぱ見る人が見ればわかるもんなのかねえ。そういえば、シャイニングナイトのワールドも、里奈の装備を一発で見破ってたもんな。
千隼「しかもINT型よ?」
エバー「うっひょー!まじかよ!?うちのギルドにもINTに初期ポイント多めに振った奴は奴はいるけど、INT型は居なかった気がするわ。それプラス漆黒とか、こだわってるねえ」
ほえー、INT型の奴って、バトルギルドには結構いそうなイメージあったんだけど、割りと少ないんかねえ。てか、サーバー内でも珍しいんじゃないのもしかして。だって、以前シャイニングナイトの奴らもINT特化って聞いて驚いてたもんな。
「え?あんたINT特化型なの?」
「え、マジで?」
そんな俺達の会話が聞こえたのか、要塞戦に参加してた他ギルドの奴らが、一斉に里奈の所へ集まってきた。めっちゃ質問攻めにあって、もみくちゃにされてる・・・。きっと隣の部屋では、めっちゃすごい速度でキーボードを打ってることだろう。
アッキー「それにしてもダーク君、BOにお友達とかいたんだ。」
エバー「あー、それについては俺から話そうか」
そう言ってエバーは、自分と俺との出会いみたいなもんを話し始める。俺がまだすっげレベルの低い初心者の頃、とある狩場で大量のモンスターに囲まれて困っている、やはりレベルの低かったエバーに遭遇したんだ。で、一緒に共闘してモンスターを全滅させたのがきっかけで、ゲーム内でよく喋るようになった。
じゃあなんで同じギルドに入らなかったのかって?だってもう、その頃には、俺は自由同盟だったし、あいつはブラックアウトに入ってたからな。
千隼「あら、いい話じゃない」
エリナ「オンラインゲームの良いところよね。全く知らない相手でも、ちょっとしたきっかけで仲良くなれるのって」
いつの間にか、質問攻めの輪の中から抜け出してきて、俺達の出会いの話を聞いていた里奈が語り出す。
そして燈色がそれに同調する。なんか燈色が言うと説得力あるよな。こいつとも色々あったけど、いまやギルドでも一番仲が良いと言っても過言ではない程になった。昼飯も一緒に食ってるし。
アッキー「そしてエバー君はサーバー屈指の大手のバトルギルドへ。そしてダーク君は、場末のギルド「自由同盟」へようこそ。一体どこで差がついた!」
ダーク「ちょっと!自由同盟作ったの、あんたの旦那さんですよ!」
アッキー「あ、そうだった!」
団長「あっはっは!」
ダーク「団長!笑う所違います!」
全くこの人は油断も隙もないな!
けど、アッキーさんの言葉じゃないけど、確かに、大量のモンスターに囲まれてひーひー言ってた時のエバーとは全く今は違う。さっき、ウォール周辺でエバーと戦ったんだけど、一撃一撃がすげえ痛いのなんのって。団長と二人がかりでも、あいつ一人に負けたくらいだ。やっぱバトルギルドに行くと、装備にもこだわりが出てくるものなんだろうか?
エバー「それにしても、お前らのギルドって要塞戦やってたっけ?」
俺がそんな事を考えていると、エバーが俺にそう尋ねてきた。
ダーク「いやあ、せっかくブラックアースやってるんだから、バトルも参加したいなーってギルドマスターが言い出してさ。俺もやりたかったし。ちなみに2回目だ」
エバー「なるほどねえ。」
そう言ってから、ちょっと考える仕草をした後、エバーは俺にある提案をして来た。
エバー「なあ、要塞戦に興味あるなら、一度俺らのギルドの防衛戦を見学してみたら?」
ダーク「BOの防衛戦って、確か、「ローザ要塞」だったっけ?」
エバー「お、よく知ってるじゃん」
ダーク「以前、お前に教えてもらったと思うんだが・・・」
確か、ローゼン地方の北方に位置する要塞だったはず。ローゼンは、ブラックアースの世界でも北部に位置していて、絶え間なく雪が積もっている景観が素晴らしい地方だ。その代わり、PCのグラフィック能力を十二分に試される場所でも有る。
俺のPCだと、降り積もる雪のエフェクトも描画可能なんだけど、里奈のゲーミングノートだとそれがきついらしい。なので、雪が舞うエフェクトは常時OFFにしている。まあそれだけ、グラフィックが
エバー「どうする?」
要塞戦も2回目でその面白さが分かってきた所だし、断る理由は何もなかった。なので、誘いを受けようとしたら・・・。
ライデン「ちょっと待った!俺も!俺も連れってって!」
燈色「私も見学したいです」
エリナ「私も、一度大手のバトルは見学してみたいわね」
千隼「皆いくなら私もいこっかな」
いつの間にか俺以外にも、色んな奴が見学したいと言い出してきた。
エバー「OKOK!じゃあ、今度の防衛戦、一応ギルドの公式の見学席を開放しとくよ。」
そういうわけで、週末はブラックアウトの要塞戦を見学する事になった。なんか、今日見た限りじゃ物凄そうな気がする。ちょっと楽しみになってきた!
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