不思議なお届けもの屋、瑠璃琥珀堂に、初々しいアルバイトが入りました。

見知らぬ誰かと出会うこと、懐かしい人と再び巡り会うこと。
失くした大切なものを探すこと、そしてついに見付けること。
そうした出会いと別れを司る「縁」とは不思議なもので、
偶然とは言い切れない物語がそこに紡がれることがある。

主人公、結には「縁」にまつわる何某かの力が備わっている。
不思議な美女、金髪碧眼の瑠璃と和装帯刀の琥珀に導かれて
お届けもののアルバイトを始めることになった結は、次第に、
すっかり遮断していた外界へと目を向け、心を開き始める。

高校入学を目前に控えたある日、瑠璃琥珀堂に迷い込んでから、
結が大切なものに巡り会う度、結を取り巻く世界が動いていく。
そんな不思議で素敵な「縁」の物語に心が温まり、熱くなり、
ページを送る手が止まらなくなった。素晴らしくおもしろい。

人の目には見えない化生たちが個性的で、少しユーモラス。
個性的といえば、結を取り巻く人間もけっこう変わっている。
時にひどく邪悪なものに出会い、結は傷付けられてしまうが、
怯えながらもひたむきに顔を上げようとする姿がいじらしい。

作中に登場する料理がおいしそうなところもお気に入り。
ひらがなを多用した文章は見た目にもやわらかく優しい。
ほっと安らげる、少しふわふわして、どこか切ない物語。

続きも楽しみにしています。

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