それでも幸せな気がした、それでも愛している、それでも終わらせられない

 首の皮1枚繋がって、やっと幸せを保っているような家族の日々が切々とつづられています。
 その痛みも、ささやかな幸せも、胸に迫ってくる中編です。
 
(以下ネタバレ含む)
 

 案外こんな風に成立しているカップルや家族は多いのかなと感じました。駄目な人がどこまでも駄目なわけじゃない。傍から見ればどうしようもないかもしれないけれど、その人なりの節度や優しさで辛うじて成り立つ幸せもあるのです。
 それを断罪してバラバラにしてしまうのは、ある意味簡単で短絡的かもしれません。耐えながらも幸せを見つけていくのが、流されているように見えても一番過酷な選択なのかもしれません。

 だから、この物語はこの家族を終わらせずに、「それでも娘と手を繋いだときの幸せは確かだ」という見送り方で締め括られました。この生活の中にも幸せはあると信じたい、彼らなりの幸せを続けさせたいという作者さんの感情移入あるいは優しさが導いた結末なのかなと思いました。

 皆さんが紹介文の「のんびり」に突っ込んでますが、本人たちにとっては「のんびりした日常」なのだろうけど、周りからすると本当に危なっかしくて仕方がない。

 連載を追いかけながら、ずっとハラハラしていました。相変わらず伊藤愛夏さんらしい良い読み物でした。

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