第79話

こんな状態でもいい、彼が愛してくれるというのなら。

そんなの嫌だ。私はちゃんと彼と恋をしたい。

相反するようで、本質はほぼ同じの、考えたって無駄な考えが私の脳を支配する。

受け入れたい、でも受け入れがたい。

私の中をぐるぐるする。怒りの連絡は、イズミに送り付けたが、どこ吹く風だ。

もともと人付き合いは浅い私に相談できる相手はろくにいない。

一人で悶々と思いを抱えていた。それでも今まで困ったことも、苦しんだこともなかった。自分の決めたことに後悔したことなんて今までなかったし、それをかなえるためにいつだって前に進んでいた。

「つぐな。」

「姉ちゃんのことを呼び捨てないの、亜哉。」

「もう、意地張ってないで怜那さんと話せば?」

「どこに母親に恋愛相談する娘がいるのよ。母親のことを名前で呼ぶのもやめなさい。」

「世の中少なくはないと思うよ。あの人ああ見えて、そういうの楽しみにしてるよ。」

「まっぴらごめんよ。」

母との折り合いは悪くはないが、得意としていないのも事実だ。

「じゃあ、さっさと拓真さんと向かい合いなよ。あゆちゃんから聞いたよ。」

「あの娘も全部を知ってるわけじゃないのだけれど…。」

「うん。そう言ってた。」

亜哉はこくりと頷く。

「でもね、今度は逃げてるのは拓真さんじゃない。姉ちゃんだよ。」

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