第71話

次の日、学校に行くのが本当に面倒だった。

実はしつこい拓真と会うのも面倒だったし、彼女たちの申し訳なさそうな顔に出逢うのも。

「疲れた…。めんどくさい。」

制服にまでは着替えたが、どうせ大した授業もなくて気力が出ない。

「もう、いっか…。」

ベッドの上に倒れこむ。本来なら、プライドが絶対に許さないのだが、精神的に疲れていたのだろうか、もう体が動かなかった。

もう両親も朝の早い弟も家を出た後だ。誰も一日くらいさぼったところで軽い小言くらいだろう。

「このままさぼろっかな…。」

お気に入りの枕にぐずぐずとしながら悩む。朝の早い亜哉に起こされたせいで、まだまだ時間があるのが逆に苦痛だ。朝弱いから起こすな、と何度も言っているのに、朝が弱いから起こすんだ、と至極全うな答えを返されて毎朝のように亜哉の朝練の時間に起こされるのだ。流石に無理やり連れだすのは勘弁してもらっているけれど、大体どちらかはいる両親にギリギリの時間に叩き出されるのが常だった。でも、今日は母も父も仕事だ。

「あいつ意外と世話焼きだよな…。姉ちゃんがこんなんだとしっかりするもんなのかねえ。」

前にコータが言っていた灯先輩の話とよく似ている。最も亜哉は灯さんほどいい男ではないけれど。

うとうとと微睡みの中にいる私のケータイが鳴りだす。これがマナーモードになっていないのも、亜哉のせいだ。

「うるさい…。」

電源を落とすためにボタンに力を籠めることすら面倒で、放っておくことにする。

しかし、一度は静まった着信は切れることなく、再び鳴り響く。おそらくだが亜哉だ。

苛立った私は仕方なく、通話を選択する。

「何?亜哉。」

「そんな地を這うような声を出すな。つぐ。」

「は?」

聞こえてきたのは予想外の人の声。

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