第67話
「拓真。」
拓真の言葉を無理に遮る。どうしても聞きたくなかった。
終わりは拓真に委ねる、と言った口はどの口だ。
「千葉さんと再会して、私のこんなことに付き合うのは…いやになったんでしょう?ゴメンね、拓真。ありがとう。」
拓真の顔は見られなかった。頑張って笑おうとするけれど、多分、笑えてない。
「こんなこと、拓真の口から言わせるほどには堕ちてないつもり。私にもプライドがあるしね。」
「つぐ、違うんだ。」
「いいよ、嘘つかないで…。ずっと知ってたんだよ、千葉さんのことは知らなかったけれど、拓真にずっと好きな人がいたことは。拓真の部屋に漂う気配で。…なんか私怖いこと言ってるね。」
「話を聞いてくれ!つぐ。」
零れそうになる涙を、必死にこらえる。膝に肘をついて、顔を隠す姿は、泣きそうなことを見抜かれてしまうと思うけれど、それでも。
隣にいた、拓真の気配が動いた。
話を聞かない、私に呆れ、教室に戻るのだろうか。
薄情だが、私の惚れた男はそういうやつだ。仕方がない。
そう思っていたら、私の階段の下の不安定な位置に座り込む気配がする。
私の手首をつかんで、無理やり拓真のほうを向けさせられる。
「話を聞いて、つぐ。もう逃げないで、ちゃんと話すから。ちゃんと話をしよう。」
逃げないで、というのは私に言っているのか、拓真自身に言い聞かせているのか。わからなかった。
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