第17話

私の偽物で。でも本物の恋はもう終わりを告げる。私と彼はきっといつまでもいい友人でいられるけれど、そこから飛び出すことは永遠にない。

彼は実家を継ぐために製菓学校に進むと前々から言っていた。見た目には似合い、性格に似合わない彼の家の家業に彼は誇りをもって、弟妹と進んでいた。

私はまだ未来なんて見えていないけれど、彼と同じ道に進むことはない。

人との関係なんてすぐに失うものだ。事実私は部という絆をあっという間に失った。今でこそこんな感じだが、私と舞奈は当初は一番仲が良かったのだ。舞奈も含めたあの幸せな時間は、私の中でのみ永久に褪せることはない。

同じように、拓真とのこの不思議な絆だってすぐに過去の思い出というなくても困らないものになる。

別に人との関係に永遠なんて願っちゃいないけれど、私だって、人との別離が寂しくないわけじゃない。私の中だけでも美しく保ちたいから、この別れを選んだのだ。

「つぐ。…つぐー?」

彼の声で我に返る、私は、私にとってこの小さな幸せの時間をまだかみしめていたい。

「なに?拓真。」

「今度、試作品食べてよ。つぐ味覚いいし、量食べるから楽しい。」

「私は都合のいい女か。試食マシーンか。量食べるとは失礼な。」

これでも体育会系だから、普通の女子よりは食べる。痩せてるわけじゃないけれど、ダイエットとか気にしたこともない。

「いいじゃん、うまいだろ?俺の菓子…そろそろ冷たくてさっぱりしたものの試作を始めたいんだよ。」

「まだ早くない?まだ私マフラーをはずせないんだけど。」

「だから試作だもん。今のうちにつくってレシピに起こして、みんなに伝えなきゃ間に合わないでしょ。」

「ハイハイ。」

まあ、甘いものは嫌いじゃないし、拓真の菓子はおいしい。

「あと、ちょっと先だけど一緒に行きたい場所があるんだ。」

「どこ?」

「秘密…でも、つぐも行きたがると思うよ。」

「なんで焦らすの、この期において。」

拓真の行動を怪訝に思いながらも、こうなった拓真が絶対にはかないことも知っている。

「俺は性格が悪いからな。…大丈夫だ。俺がついてる。」

「何かっこつけてるのよ?」

私は心底不思議に思って思わず口から出た。

「まあ、そういうことだ。よろしくな。」

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