最終回

 恋人と別れた俺は名前も知らないバーに立ち寄った。

 やけ酒を煽っていると、カクテルのメニューに「最終回」の文字を見つける。

 グラスを磨いていたマスターに声をかけ、メニューを指差した。

「これ、なんですか?」

「その名の通り、最終回の気分を味わえる一杯ですよ」

「毒でも入ってんの? まあ、それでもいいや。お願いします」

「かしこまりました」

 マスターがシェーカーを振り始めた直後、地震がやってきた。

 地面どころか天まで揺れている。俺は宙に放り出された。

 なんだこれは。天変地異か。もう、どっちが上でどっちが下かもわからない。

 カウンターの向こうで、逆さまに立ったまま平然とカクテルを作っているマスターが見える。

 そのシェーカーの中には小さな青い球体が入っていた。

 それはまるで――

 マスターは微笑む。

「注文したのはあなたですよ」

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