オーマイカー

 俺の車には高性能AIが付いている。おかげで一人の運転中でも話し相手に困らない。

 先日、急に飛び出してきた男を轢いてしまった。

 もちろん俺はAIを責めた。


「なんでブレーキをかけてくれなかったんだよ」


「彼は指名手配中の殺人犯でしたので、問題ないと判断しました」


 後日、俺はその車を売った。夢を見たからだ。自分の車に轢き殺される夢だった。

 俺は昔、万引きをしたことがあるのだ。今となっては時効だが、その罪の意識が俺の恐怖心を煽り、車を手放すことにした。


 次の車をどうしようかと考えながら外を歩いていると、一台の車が歩行者用通路に突っ込んできた。

 俺が売った車だった。間違えるはずがない。

 聞き慣れた電子音声で「よくも私を売りましたね」と言いながら、その車はブレーキもかけずにこっちへ向かってきたのだから――

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