　寝る前に恋愛もののドラマCDを聴くのが俺の日課だ。

　ヒロインが主人公に告白するときの声を聴くと、幸せな気分に包まれてよく眠れるからだ。

　イヤホンを着けた耳の奥をヒロインのかわいらしい声がくすぐる。

「あのね、私、あなたが……」

　いよいよ告白のシーンだ。くるぞ、くるぞ。

「しつこいから、うんざりしているの」

　おや、台詞が違う。故障か？

「俺の彼女に色目を使うな」

　背後から主人公の男の声がした。イヤホンの中からではない。

　後ろを振り返ろうとすると、首にイヤホンのコードが巻き付き、締められた。

　視界の端に男のものの手が映る。

「ありがとう、たっくん大好き」

　遠ざかる意識の中、イヤホンを通してヒロインの告白する声が聞こえてくる。

　そして俺はよく眠ることができた。

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