かに転生

 朝起きて食卓へ行くと、俺以外の家族全員が蟹になっていた。


「あの、なんで俺だけ人間?」


 たまらず訊くと、ハサミで器用に新聞をつかんでいる父らしき蟹が答える。


「そんな小さなこと気にするな。お前も俺たちの家族だ!」


 そう言い切ってガッツポーズを取ろうとする父蟹の手は、依然としてチョキのままだった。

 あるいは親指を立てようとしたのかもしれないが、この際どうでもよかった。

 うん、小さなことは気にしないでおこう。

 俺は食卓に着いて、みそ汁をすすった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る