物語を重視するかキャラを重視するか

 皆さんは物語を描く時にストーリーを重視しますか? それともキャラを重視しますか? この2人は両立出来るようでいて中々両立の難しい問題だと思います。


 漫画の指南書とかだとキャラ重視がほぼほぼ正解です。かの劇画村塾主宰の小池一夫先生は漫画はキャラが命。いいキャラが生み出せれば成功したも同然。みたいな事をおっしゃっておりました。キャラが物語を引っ張って作品が作られていく。魅力的なキャラが生まれてこそ作品は読まれると。


 キャラではなく世界観を重視したのが手塚治虫先生ですね。だからこそスターシステムが有効に働いたのでしょう。先生はキャラは記号だと割り切っておりました。

 ただし、誰もが天才の仕事を真似出来るかと言えばそうではありません。手塚治虫先生程の領域に達するのはとても難しいのです。


 さて、いきなり漫画の話をしてしまいましたが、何故そんな始まり方をしたかと言えば私にとって漫画の方が身近だからです。同じ物語を描く手法でも漫画と小説は少し違いますよね。


 で、小説の場合ですが、ラノベに関して言えばやっぱりキャラ重視でもいいのではないかと思います。イラストなんてついた日にはそのキャラ目当てに読む人まで現れますしね。


 しかし、世界観重視、物語重視もまた小説の場合、アリなパターンだったりします。キャラをさほど重視しない作家さんも大勢いらっしゃいます。

 よくキャラが勝手に動くと言いますが、キャラ重視の作家さんは勝手に動くのをうまく利用して物語を再構築するのに対して、物語重視の人はキャラのアドリブを許しません。強固に固定された運命を確実に歩ませるんですね。


 これはどちらが良い悪いの話ではありません。甘党や辛党みたいに好みの話と言えましょう。なので、器用に使い分けられる人もいると思います。逆に絶対どちらかの手法でしか書けないと言う人も多い事でしょう。


 物語に明確なテーマがあってそれを確実に読者に伝えたい、最適解のある話ならばその場合、キャラの自由より物語を重視すべきでしょう。話が脇道に逸れれば言いたかった事がうまく伝わらない可能性も出てきてしまいます。


 逆に物語ではなく、こう言うシーンが描きたいとか演出重視で物語を描きたいならばキャラを自由に動かせた方がいいかと思います。漫画の話でアレですが、水島新司先生はバッティングのシーンが上手く描けてしまったので、ファールか何かの予定をホームランにしてしまったと言う逸話があります。アドリブ重視で面白くなった方優先。これはこれで書いていて面白いですよね。


 先日、世界観重視の人の書いた創作論を読んだのですが、その人はやりテーマを重要視していて、キャラのアドリブも許さなければ1人称視点の話も書けないと書いていました。考えてみたら1人称視点の話を書く人は確実にキャラ重視ですよね。

 私はキャラ重視で書いていますので、違う価値観の人の考え方を知れたのはとても新鮮な経験でした。


 キャラ重視の書き方をする場合、物語とかテーマとか割とどうでもいいんですよね。書いている内に自然にそれっぽいものが出来上がってくる感じで。一番は自分が生み出したキャラクターが躍動する様子を見てもらいたいと言うものですから。

 あ、これは私の場合の話です。テーマも重視しつつ、キャラ重視の人もきっと多いでしょうね。

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