参加者集結《アスガルド》コンサート
「おい、
同僚の
「確かに、私はもう歳です。他の皆さんに比べれば、動けない足手纏いのジジィでしょう。ですが、我がメールが行けと、力になれるといってくれている。力を貸してくれと言われて貸さぬほど、私は自分勝手に育ってないんですよ」
「……決めたんだな」
「えぇ」
決意は揺るがない。涼仙の目を見れば、そんなことはすぐに分かった。他に止めるための言葉を、持ち合わせていない。
「分かった。クリスマスだったな。その日は俺とスタッフだけでやる。店のことは任せて、久し振りに走って来い!」
「……ありがとうございます」
とある駐車場の車の中
「一二月のクリスマスコンサートに、神が来るらしい。おまえも来るか?」
運転席でアイフォンを操作する
「俺はインドア派なんだ。アウトドアはゴメンだね」
「まぁ、そう言うなよ。今回は結構おもしろくなりそうだぞ?」
「何が」
「高校生のメール所持者四人に、子供が一人。老人が一人。俺の方で分かってるだけでも、軽く六人は所持者が来る。歴代仮面ライダー全員集合より、盛り上がるだろ?」
「……確かに、おもしろそうではあるな」
ジャックはパソコンのメール画面を開き、手短に打った文章を送信した。そしてパソコンを閉じて脚を組み、ミラーに映る二界道を見てニヤリとする。
「いいぜ、行こう」
ジャックのメールが送られたケータイを覗き、マイク・セイラムはタオルで汗を拭いながら階段を駆け下りた。
「Hey! カナ! サヤカ!」
「何? あなたただでさえ筋トレで騒々しいんだから、声までバカデカくしないで」
「Oh、それはSorry。だがまた、Bメールから情報が入っタ」
「あら? 確かまえ、それでさやかにお友達が出来たのよね。今度は何かしら」
「カナ、マリーの件はそんな簡単な話じゃ……まぁいいわ。で?」
マイクがメールに目を通し、音読する。ただし度々漢字が読めず、さやかが途中で奪い取った。
「一二月二四日、八景島で行われる、詩音と名乗る者のコンサートの開催が決定。そこに神も出席の情報あり……これは好機と見て、より多くの参加者に来るよう呼びかけている。是非、力を貸して欲しい……Bメール、Jより」
「八景島? それはどこダ?」
「神奈川県の、横浜っていうところにある大きな島よ。水族館や遊園地があって、確か何年も前、その遊園地の一部がコンサートドームになったって」
「本当? カナ」
カナが頷く。さやかはマイクにケータイを返すと、その胸を拳で小突いた。
「マイク、行ってくれる? 八景島」
「構わナイ。だが、俺だけでいいのカ?」
「あなたはカナと私を助けてくれた。私、実際は外人苦手だけど、あなただけは信用できる。だから任せてもいい。それに、私まで行ったら、カナが一人になる――」
「あら、じゃあ私も行けばいいのね?」
カナの発言に、二人は驚いて固まった。テーブルの上のケータイを手探りで見つけ、握り締めたカナがニコッと笑う。
「私が行けば、さやかもマイクと行動できるでしょう?」
「で、でもそれじゃあ外でカナを一人に……」
「なら、三人で動けばいいじゃない。マイクなら、私を背負いながら動けるでしょう?」
「ま、まぁ……可能だが」
「マイク!」
「じゃあ決まりね! 動き易い服にしないと。フフッ!」
その気になってしまったカナは意外と頑固だ。今まで折れたことは一度もない。連れて行くしかないと、二人は諦めた。
「コンサート? そこに神様が出るってんすか?」
大きく膨らんだリュックを降ろし、
「すでに十名以上の参加者が、そこに行くことを決めています。参加者は多い方が、神を捕らえられる確率が上がると思いますが?」
「……そうっすね、分かりました。俺も行こう。怪我人が出たら大変だ」
「そう……よかったです」
「そういえば、あなた誰――」
リュックを持ち上げた正大のまえから、その人は忽然と消えた。周囲を見渡すが、その姿はどこにもない。
「どこ行った? あの白い人」
大阪 とある路地裏
『一二月二四日のコンサートに神参加。神奈川県横浜、八景島に向かえ』
「ついに出るか……神は、俺が殺す」
鮮血を流すそのナイフを握り、テイラ・ガンバーグは路地裏を抜けていった。
神奈川県 八景島シーホール
海上に浮かぶコンサートホールには、約七万の観客が入る。その中央に、歌手が立つ大きなステージ。誰もいないそのステージに一人の人影が立ち、両腕を大きく広げて空を仰いだ。
「潮の香りがする……少し辛いが、命の母――神の子の匂いだ」
「神様」
「ゼウス、Lメールには教えてくれたかい?」
神の背後に立ったゼウスが頷く。神はそれを見てもいないのに、口角をグッと持ち上げて笑みを浮べた。
「このコンサートは、このゲームの
神が指をパチンと鳴らすと、周囲の照明がステージに立つ二人を照らした。
「この一年、参加者達がどこまで
名前を呼ばれた他の三人が、ステージに飛び移る。ポセイドンは神にも構うことなく、咆哮を響かせた。
「前哨戦にしては結構本気だなぁ神様! ここは俺とアテナだけで十分だってのに!」
「いや。今回は全二六人中、一三人が来る。油断してると、簡単に見つかってしまうかもしれないんだ。だからポセイドン、そのやる気は保っててくれ。アレスは、その刀を参加者達に向けるように」
ポセイドンを睨み、刀を抜いていたアレスが刀を納める。二人の間にいたアテナはホッと胸を撫で下ろした。
「さぁ、いうところの中ボス戦はキリスト生誕を祝う神聖な日だ。“歌姫”
再び唸るポセイドンの咆哮が、会場全体に轟き渡った。
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