刻刻

 刻刻は時間の止まった世界の中、その世界で動き回れる特殊な能力を持った人々が活躍する話です。バトルモノの話はやたらとスケールが大きくなるパターンが多いのですけど、この話はそんなにスケールが大きくならずに割りと小さな範囲で話が進んでいます。

 今のところ大きなひとつのエピソードをじっくり描写している感じですね。もしかしたらこのエピソードが終ったら物語自体も終わるのかも。


 バトルがメインで展開している割に、この物語は敵味方共に地に足がついていると言うか、地味なんですよね。今のところ常識はずれの超能力は登場しませんし、国家権力クラスの軍事力が介入すると言う気配もない。スケールの小さいまま話が進んでいて、それがリアルにも感じられます。今後の展開ではどうなるのか分かりませんけど。


 特殊な能力を持った主人公達に敵対するのが、同じ能力の伝承を持つ宗教団体と言う構図は王道で、ある意味手垢のついた新鮮味のないテンプレと言えるかも知れません。ただし、力関係で言えば飽くまでも強いのは主人公側と言うところは少し面白いかな。だから狙われてもいるのですが。


 時が止まった中で動き回るのに必要なのが空中を飛んでいる光るクラゲみたいなもので、それが体に入る事で動き回れるようになります。どうやるのかと言うと、儀式で入り込ませるか、その入り込んだ人からクラゲが出ていって、それが勝手に入り込む事で動けるようになるかのその二択。つまり、望んでいないのにその力を得る人もいると。


 止まった世界で動けるようになっても、そこで絶望すると身体から変な何かがにょきにょきと生えて空に浮き、つには別のものになってしまいます。その別のものは管理人とかカヌリニとか呼ばれていて、止まった世界で動ける人が止まった人を殺そうとすると現れ、殺そうとした人を殺そうとします。管理人の力は強力なので襲われた場合、たいてい即死します。この異形の存在がこの物語のキーとなるんですね。


 さて、この物語は、止まった世界で狂った宗教組織の追手から主人公達が立ち向かうと言う形を取っていますが、敵側が屈強な男達の団体に対して味方側が一家族と言うとても不利な状況から始まります。何か飛び抜けたものがないととても太刀打ち出来ません。そこで爺さんは瞬間移動の力を、主人公は動けるものから光のクラゲを追い出す力をそれぞれ持つ事でパワーバランスを保ちます。この作品で出てくる特殊能力はそれだけです。今のところ。


ここまで地味な能力しか出てこないバトル作品ってのも中々ないですよね。敵側なんてそう言う特殊能力を持つ人すら出てこないんですから。


 物語は中間地点まで進み(※執筆時)、不運に巻き込まれた一家が救われるところまで進みました。主人公の父親が実はかなり強い殺気の持ち主だったりとヤバゲな設定が明かされ、話が今後どう進むのかさっぱり予想が出来ません。次回からは宗教団体の教祖が本格的に動き出しそうで、ますます目が離せませんね。

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