エンドロール
主人公
…巽
齢百二十ほどの人魚の娘。清水と呼ばれた地で、母・瑞己に養育されていたが、赤子のころに柳に託され、瀧川なる山奥の集落で治水の龍神「おかみ」として崇められていた。
…船頭
黄泉の川で、亡者を渡す仕事をしている船頭。船頭をする以前の記憶が無い。黄泉の川に恐怖している。
…客
黄泉の川で、船頭を迎えに来たと主張する亡者。船頭に空船と雲児、巽人魚の因縁話を語り、思い出せと迫る。
…葦児 玖三帆
雲児と空船のもととなった青年。母を失い、克巳の世話を条件に、母の故郷である瀧川へ迎えられた。克巳の奇行や集落での因習に戸惑う。
過去に海難事故に遭い妹を亡くしており、水が苦手。自身の溢した弱音がきっかけで母親が自殺を図ったため、それらを思い起こさせる女性全般も苦手。克巳のことを妹と重ねている。享年20歳間近の19歳。
柳の息子と一見してわかるほどに父親似。
…矢又 克巳
空船と雲児のもととなった少女。玖三帆の同居人。事故で孤児となり、瀧川に引き取られ、巫女として仕立て上げられた。自身を誰かに『食べられる』ことを至上とする性癖を持ち、死に場所とその相手を探している。
玖三帆に稚い情を抱くが、柳に気に入られたことをきっかけにして人魚の呪いに巻き込まれ、玖三帆が柳に殺されるという運命に抗い、巽人魚の血を飲み、繰り返す時間の中に閉じ込められる。享年14歳。
…天際の雲児
空船の半身。流れる水のように長い黒髪で、雌雄がなく、関西弁のような言葉遣いで話す。昼は人間の子供として近隣中学校に数十年通っている。夜は風と雲を操る妖となるため、雲児が住むようになってから街では夜間に降るゲリラ豪雨が増えた。自分たちがかつてヒトであったことと、水死したことは憶えている。
享楽的で世話好き、ヒトとの交流を好むが、それゆえに年を取らない幼い我が身に、隠れて苦悩している。
克巳の肉体と玖三帆の面立ちを受け継いでいる。
…煙霞の空船
雲児の半身。年若く幽鬼じみた美男子の姿。影のように長身で、夏でも肌を晒さない黒装束。
雲児とは逆に、夜に人間になるため、夜間の高校とアルバイトに勤しんでいる。日のあるうちは『面』と呼ばれるものたちを顔に貼りつけ、自我が薄くなる。
そのため人としての自覚が強く、雲児とたびたび衝突する。大の風呂好き。
玖三帆の肉体と克巳の面立ちを受け継いでいる。
…女面(おもかげ/巽/八雲?)
能面「孫次郎」を模る。たおやかな女性の声で話し、礼儀に厳しい。車の運転がうまい。
正確には、巽を含めた、瀧川に生きて死んでいった女達の念から生まれた集合体である。
…男面(夜叉丸)
能面「中将」を模る。神経質そうな銅鑼声で話す。面の中でもとくに螺子が外れたように短気で、たびたびどこからか取り出した白刃を振り回す。
瀧川に家族を奪われた男達の無念の集合体。
…翁面(龍神/十束)
能面「翁」を模る。柔らかな老人の声で話し、温和で洒落がきき、子供などのきれいなものが好き。
そのため、空船の顔にかかる頻度がいちばん多い。
…河津(阿漕/柳)
能面「河津」を模る。水死人の魂を持つ亡者面。ひょうげた男の声で狂笑をあげ、時に粛々と語り出し、他人を翻弄させる。
瀧川に捧げられた恨みの集合体。
…釣眼(御神)
能面「釣眼」を模る。黒塗りに金泥で塗られた目を持つ。龍神としての矜持が高く、抜け目なく空船たちの体を狙っている。扱いに困るため、切り札として過去数度しかかけられたことがない。
…女面(橋姫/巽)
おもかげが陽ならば、橋姫は陰の存在である。巽人魚は衰えた肉体を棄て、雲児と空船がある限り存在するものに為った。
それが果たして幸福であるかは、彼女だけが知る定め。
端役
…柳
玖三帆の父。明治生まれ。庄屋の次男坊だった男。兄を食い殺した人魚・瑞己の美しさに憑りつかれ、その身を狙うが、逆に巽の永遠の手足となる呪いをかけられてしまう。流れ着いた地「瀧川」で、老いることなく百年余りを過ごし、巽を利用した悪巧みで瀧川での地位を確立していった。しかし巽の成長に従い、柳自身の自我を封じられ、別の人格をつくられてしまう。
…第一の柳
前述の最初の柳。巽を罵倒と暴力で支配する。
…第二の柳
巽が最初に作り出した人格。巽の理想の男性像として作られたが、好色のため疎まれた。
…第三の柳
巽が二番目に作り出した人格。従順で並外れて機転が利くが、少女に執着する性癖を持つ。
…第四の柳
巽が三番目に作り出した人格。感情が薄く、巽に命じられたことにしか行動できない。
第五の柳
玖三帆亡きあと、瀧川から逃げる際に玖三帆の体で作った柳。献身的に巽に仕え、文字通り手足となって糧を運ぶ泥人形。巽は全て忘れ、三十年あまりをこれと過ごした。
…瑞子(水子)
齢八百の人魚。養子である照朱朗を支援する古老の妖。寿命が近く、呆けかけている。
各地を巡り、娘や孫の墓を掘り返しては住処である『人魚沼』に桜の木と共に供養することを繰り返している。
自身が正気のうちに人魚の一族にかけられた呪いと因縁を解くことを望み、人魚に因縁を持つ雲児に交渉を持ちかけ、雲児の人間時代の記憶を呼び覚ます。
…瑞己
齢二百で人間に討たれた人魚。巽の母。瑞子の娘。死した後は他の人魚と同じく、黄泉の果ての塩の丘で永遠の責め苦を負っていた。娘の生末を憂いてがために正気を保ち、母である瑞子に協力して、黄泉にて空船の最後の記憶を呼び覚ます任を負う。
…天華の照朱朗
低迷した平成妖怪事情を憂い、一部古老妖怪の支援を受けて結成された若年妖怪たちの組織『新時代百鬼夜行連盟』の頭目。雪女の血を引く赤毛の半妖。
養母の願いを叶えるために雲児を屋敷に招くが、記憶を取り戻した雲児の変貌に憂い、瑞子と対立して空船に協力する。
…亜砂子
照朱朗の側近。永遠の十七歳を自称する、セーラー服姿の少女幽霊。
…夜雀・しょうけら・河童・子狸・座敷童子・雨童子・他
照朱朗配下の妖怪たち。
…乙子 誠光
空船と雲児を拾い、養育する元修験僧。
毎夜飲み歩いても二日酔いしない肝臓と、黄泉を行き来することができる脚と、極めて科学的な思考を持ち、若年妖怪の頭目たる照朱朗と腐れた縁のある、三十年姿の変わらないというただの人間(仮)。現在は地方都市にある邸宅に住む。
…佐陀 帆波(葦児 帆波)
瀧川の分校教師。麓に住まいがあり、毎朝松弥のバスでやってくる。克巳いわく「なよなよした蜻蛉みたいな眼鏡の先生」。
玖三帆の母親・美津流の弟(叔父)にあたり、かつて柳の小姓を務めていた。瀧川の「男は山から逃げられない」という呪いを体感した人物であり、玖三帆の生末を憂いて、亡者となっても助言を与えた。
…矢又 松弥
瀧川に二人だけのバス運転手。玖三帆にとっての第一村人。玖三帆のことを何かと気に掛ける。帆波と共に亡者となったあと、供物として流された弟・竹流を探して常世をさ迷う。
…葦児 弥百合
玖三帆の時代の村長。
…葦児 美津流
玖三帆の母で、巫女だった女性。弥百合の娘。
…矢又 海砂
美津流の幼馴染。克巳の母。船大工だった祖父に教えられ、瀧川の儀式について造詣が深かった。後に美津流を連れて瀧川の山を下り、克巳を産む。
…夜叉丸(夜叉姫)
平家落人。葦児の開祖となり、瀧川の儀式の鋳型をつくる。最後は玉児を追って身投げした。
…玉児(玉依姫)
瑞子の母。天女から生まれた最初の人魚。子を想い、瀧川に呪いをかけた。
…八雲
最初の天女。玉児の母。
…十束
八雲の夫。玉児の父。水死したのち、躯を玉児に喰われた。
語り部
…獏の海月
ブドウ色のハットを被って黒の上着を着た、頬にシミのある男。飲み屋で出会った青年らに、『孕み人魚と惡の華』と題された物語を語る。
その正体は、人魚の犯した罪の裁定を行っている天女の遣い『獏』。
…佐陀 久海帆と、雲児の同級生
雲児と空船に縁ある二人の青年。人魚一族の裁定を託される。
佐陀久海帆は、佐陀帆波の直系にあたる。
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