第38話
「……新入部員、ですか?」
栞菜の携帯からの知らせに少し驚いた千秋。
しかし、現在の戦艦部は人手が少しでも欲しい。
最低限10隻を用意しないといけないのに未だに5隻しかいないのだ。
「ああ、この前の試合を見て入部届を出してきたのが何人かいる。艦長職をやりたいって言うのも何人かいたから今、艦を見せている所だ」
「では、私も行った方がよさそうですね。すぐ行きます」
携帯をしまうとすぐに部室を出る千秋。
50万t戦艦を模しているため異様に広い甲板の部分を小走りで走って行く。
港はすぐそこだが現在、岸壁に接舷しているのは使用中の戦艦5隻のみ。
他の艦は遥か沖合に停泊している。
見ると内火艇のいくつかが無くなっていたのでこれを使って艦を見に行ったのだろう。
「では、よろしくお願いします」
「お任せください!!」
内火艇を操縦する女の子型のアンドロイドに頼んで内火艇を出す。
知らせにあった艦を順々に回っていく必要があるだろう。
「一番最初は……扶桑ですか」
日本海軍が初めて自力で設計した超弩級戦艦だ。
35.6cm砲6基12門の重火力と当時としては高速に分類される24ktの速力を兼ね備えている。
防御思想は問題があるが大和をはじめとする後の日本戦艦達を設計するための礎となった名戦艦である。
「……あれですね」
改装を重ねた結果の奇抜な艦橋がはっきり見えてきた。
妹の山城と仲良さそうに寄り添っている。
甲板まで上がると何人かの生徒が待っていた。
「初めまして。新しく入部することになった藤田紫音です。この扶桑の艦長を志願させてもらいました」
「こちらこそ初めまして。今、部長を務めさせてもらっている長嶋千秋です」
黒く長い髪が異様に白い肌によって目立ち、大人びた印象を与える。
そして何より身長がかなり高い。
170cm代半ばぐらいあるだろう。
後ろには髪型こそ違う物の瓜二つの人もいるので、双子なのだろうか?
千秋も見た目だけなら大和撫子と言った感じだが、この二人はそんな「なんちゃって大和撫子」ではないだろう。
「この扶桑をよろしくお願いしますね。ところで、なんでこの扶桑を選んだんですか?」
「それは……大砲が6つもあって強そうなので」
「そう……ですか。では他の人の配置などが正式に決まったら教えてくださいね」
扶桑はここにある戦艦の中でも特別強いわけではないのだが、それは言わない方がいいだろう。
次は戦艦紀伊に向かう。
この船は史実では建造されていないので架空艦に当たるのだが、それでも天城をもとに防御力を強化した戦艦ゆえに強力な艦だ。
甲板の上では扶桑と同様に何人かの生徒が待っていた。
「フンッ!!私が大熊大河よっ!!」
千秋の目の毎に立っているのは態度こそデカそうだがどう見ても小学二年生くらいの身長しかない。
せいぜい120cmあるかどうかということろだろう。
「あ、えっと……お嬢ちゃん、どこから入ってきたのかな?ここは小学校じゃないよ!!」
千秋のその言葉を聞くと大河の目がつりあがった。
少し後ろに下がってなぜか助走をつけ始める。
「わ・た・し・はっ!!16歳の高校生よっ!!くらえっ!!」
大河の超低空ドロップキックが千秋の脛に炸裂した。
泣き所にとんでもない打撃を喰らった千秋は足を押さえてのたうちまわっている。
危うく甲板から海面に落下しそうになった。
紀伊の砲術長を担当することになった汐留渚があわてて止めて治療してくれたせいで何とか助かったが。
Battleship Operation ―戦艦部 進撃します― Infinitum @Infinitum
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Battleship Operation ―戦艦部 進撃します―の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます