第97話俺Tueeee!!
「ちょっとこの剣を振ってくれるかな?」
イツキは自分の持っていた剣の中から一振り取り出して彼に渡した。
柴田輝幸はそれは片手で持つと軽く頭上から振り下ろした。
シラネはその姿を見て目を見開いた。
「イツキさん……その剣は……」
「そうだよ。オリハルコン。勇者級の力が無いと持てないし、ましてや振る事なんかできやしない代物だよ」
「でも、今彼……振り下ろしましたよ」
「ああ、振ったなぁ……間違いなくチート持ちだな」
「という事は『俺TUEEEEEE』ですか?」
とシラネは呆れたように声を上げた。
「そう言う事になるな」
イツキはシラネの返事が余りにも間が抜けていたので苦笑いしながら答えた。
イツキは柴田輝幸に向き直ると
「チートって分かる?」
と聞いた。
「はい。分かります。僕って結構強いんですか?」
「まあ、その辺の冒険者にならいい勝負できるんじゃないかな? ちゃんと計った訳ではないから確実な事は言えないけど……」
イツキはそう言いながら彼から剣を受け取った。
そして目を細めて彼を見つめながら軽く呪文を唱えた。
どうやら彼を力を鑑定しているようだ。
「ふむ。間違いないな……チート持ちは久しぶりだ……」
「そうですか……でどうします? 彼?」
シラネはイツキに答えを求めるように聞いた。
「う~ん。このまま放って置く訳にもいかんしなぁ……」
イツキは腕を組んで考え出した。
気ままな冒険の旅なら彼をこのまま仲間にしてもなんの問題もないが、今は皇太子が正使の使節団の一員だ。好き勝手に人を連れて行く事は出来ない。
かと言ってこの力だけは異常な能力のこの男をこのまま野放しにするのも心配だった。
彼はまだ自分の力がどれほどか分かっていない。
そんな男をこのまま放置すると他人はもとより本人にもいい影響があるとは思えない。
「使い慣れてない過ぎた能力は身を亡ぼすからなぁ……」
イツキは何気に呟いた。
「もしかして、僕ってそんなに強いんですか? だったら一人で冒険に行っても大丈夫ですよね」
「うん?」
イツキはその言葉に軽く反応した。
「確かに君は『俺Tueeeeeeeeee』なんだが、今はそんな奴はこの世界に腐るほどいる。君だけではない。君はまだその力を活かす方法を知らないが、君以外の『俺Tueeeeeeeeee』達はさらに強くなった上に経験も豊富だ。だから心配なんだ。彼らは伊達に生き残った訳ではない」
「そうなんですか……」
イツキの言葉を彼はあまり理解していないようだった。
「この世界の人間は、異世界から転移してきた見知らぬ者を誰もが皆歓迎してくれると思っているのかな?」
「そうでは……ない……様ですね……」
「どちらかと言えば本当に強くなる前に、排除しておこうと考える奴の方が多い。あるいはその力を利用するだけ利用しようと考える奴も多い」
そう言いながらイツキの脳裏にはシューの姿が浮かんでいた。彼はここに転移して来た時、その力をアサシンとして利用された。
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