第5話「われは祈願す」

「われは太陽神ラーの秩序のもとに冥界神オシリスの加護を受けし者なり! われは祈願す! われは神々の仲間として呼びかける!」

 ツタンカーメンの全身が光り出す。


「われは日の出であり、始まりであり、くり返す! わがもとに聖なる輝きの神の力あり! 南北の聖なる王らはわれとともにあり!」

 ツタンカーメンを中心に炎が広がる。


「天の光が善き人々をいだくがごとく、よこしまなるモノよ、地の炎に抱擁ほうようされよ!!」

 炎が怪物『猿』を包み込んだ。



 一発目の炎では、怪物は黒焦げになりながらも抵抗していた。


 二発目の炎を受けて、勝ち目はないとようやく悟った。


 三発目の炎を食らう前に怪物は、カルブを盾にしようと腕を伸ばしたが、しっぽに引きずられて転んで、三度、黒焦げになった。


 そこに四発目の炎が迫る。


 怪物は倒れていた半身と抱しめ合って、体をぴったりくっつけて、もと通りのような二本足の格好で逃げ出した。



 しかし喜ぶ暇はなかった。


「やばいカルブ! 力を抑えられない!」

 ターゲットが居なくなっても、炎は収まることなく広がり続ける。

 ツタンカーメンはとっさに川に飛び込んだが、それでも炎は止まらず、燃え盛り、カルブにまでも襲いかかった。




「!?」

 カルブの目の前に真っ白な鳥の羽が舞う。

 無数の羽毛が重なり合ってバリアを作る。

 羽が散ると、炎は消えていた。


 カルブのかたわらに、白黒の羽毛と細長いクチバシの、朱鷺ときの頭の神が立っていた。

「こうして顔を合わすのは初めてだな、カルブよ。私は知恵の神トート。お前のおそなえ物のパンケーキは実にうまかったぞ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る