ねことじいちゃん

 あの猫写真で有名な岩合光昭さんが初めてフィクションの映画を監督した作品、それが今回紹介する『ねことじいちゃん』です。

 原作はイラストレーターのねこまきさんで、優しい世界観が人気の作品となっております。原作は読んでないので映画と原作との比較は出来ないのですが、映画の方がシリアスな感じになっているっぽいみたいですね。


 この映画の特徴はとにかく猫です。常にスクリーン上のどこかに猫がいるってくらい猫が沢山登場します。流石岩合監督ですね。猫ちゃん達、しっかり演技をしているのですが、自然すぎて全く演技に見えません。すごい。どうやったらこんなに演技が出来るんでしょう。これも監督の手腕なのでしょうか。


 映画の話を単純に紹介すると、とある過疎の島を舞台にした猫とそこに住む住人達のドラマです。老人が多い島ですけど、ちゃんと若者もいて、その若者達のドラマも並行して描かれているんですよね。描かれ方はやはり島が少しずつ淋しくなる系のアレなのですけど、そこに猫を介在させる事で雰囲気も柔らかくなっています。

 映画の舞台は原作の舞台の島で撮影されているのですけど、その島も映画で描かれるくらいに猫がたくさんいるのでしょうか? 少し訪れたくなってしまいました。


 それと、島は愛知県の島なのに何故登場人物の1人として訛っていないのかと、そこはちょっと気になりました。原作の主人公のじいちゃんはちょっと訛りが入っているんですよね。

 映画の設定上は訛っていない地域のとある島って設定なのかもですが、お年寄りほど方言を口にするものなので、出来れば少しは訛って欲しかった。標準語のおばあちゃんの口喧嘩とか、ちょっと違和感を感じちゃいましたからね。残念な点があるとしたらそのくらいかな。


 この映画にはびっくりするほど沢山の猫が登場するのですが、逆に猫以外の動物が見られないんですよね。そこもちょっと不自然かな、とか思ったり。映画の主軸からずれるので猫しか登場しないのかもですけど。


 映画は春から始まり春に終わります。一年を通して島の情景と、ドラマと、猫達が描かれていきます。淡々と月日が流れていく。若者もお年寄りも旅立っていく。

 この映画は残された者達の物語なのかも知れません。


 猫目当てで見ても十分面白いと思います。老人達の人間模様も島の住む若者達も最後には全て愛しく感じられる、そう言う作品です。良かったですよ。

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