書くから読んでね

@kiyohide

第1話マルイ

 小説を書いてみようと思って筆をとると、今まで頭の中で渦巻いていた小説が一瞬にして消えてしまう。

一体何を書こうとしたのすら消え失せてしまうのだ。つい先ほどまで、エンジンをかけ、勢いよく走りだそうとしていた自動車が、一瞬にして消え失せてしまうのだから、弱ってしまう。題名まですっ飛んでしまうのだから始末が悪い。

 ところが、今夜あたり布団の中に入り眠ろうとすると、むくむくと失われた小説が頭をもたげて、生き生きと走り出すのだから、また、明日あたりは面白いのが書けそうだなといろいろと考えているうちに眠ってしまい、目が覚めた時には何もかもがなくなってしまっている。

 夢うつつの中で小説は走り出し、現実に戻ると消え失せる。夢落ちという手法があるが、現実落ちとは珍しいのだ。現実は夢なのたろうか、現実なのだろうか。

 ふっとそんなことまで考えてしまうのだからなおさら始末が悪いったらありゃしない。こんな書き方をしてしまうということはまるで夢の中で体験する時間の中での言語感覚で、まったく現実の中でこんな書き方はしないだろうと思う。

 すると今は夢の中での現実で、現実の中での現実とは違うのだろうと思ってしまう。はたして、何を基準に現実を現実と決めればいいのだろうか。そうこう書いているうちに、食事の支度の時間がやってきたので、ひとまず筆をおくことになるが、

果たして続きがあるのだろうかという思いもあるのだが、とりあえず、また。


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