第479話 高等魔術学園での説明会?

 今、シュリの目の前には5人の女性がいる。

 最初はもちろん、婚約者候補であったフィリアだけに説明するだけのはずだったのだが、なぜか、いつの間にかこうなっていた。

 誤算1人目はサシャ先生だった。

 故郷に帰るための休暇申請をしつつ、用事があって高等魔術学園に行くので今日も休む事を伝えたところ、



 「私も同行します」



 とくっついてきてしまった。

 フィリア姉様に個人的な話をしに行くだけです、と一応お断りはしたのだが、



 「私も聞いておいた方がいい話のような気がします」



 と強行に押し切られた。

 もしかしたら、宰相であるお父さんから全てとはいわずともちょっとした情報漏洩があったのかもしれない。

 そんな訳で、どうしても断りきれなかったシュリは、サシャ先生をお供に高等魔術学園に向かった。

 そして、フィリアが今どこにいるか確認するために受付に行ったところで、誤算2人目に捕まった。



 「しゅ~りっ」



 そんな呼びかけと共に、背後から大変ボリューミーで柔らかなものが押しつけられる。

 聞き覚えのある声に、



 「アガ……」



 ついつい名前を呼びそうになって、口を押さえる。

 ここでのアガサと言えば、上品な老婦人の学園長のことだ。

 それと同じ名前で背後にいるであろう妙齢の美女に呼びかけていいものか、判断に迷いつつ、賢く口を閉じたシュリの耳に、唇と思われる柔らなものが触れ、



 「アガサ、で大丈夫よ。ここの学園長を名前で呼ぶ人物なんてほとんどいないし、私と彼女を同一人物とする人間もいないでしょうから」



 熱い吐息と共に、シュリにだけ聞こえるようにそんな言葉が吹き込まれた。

 それから更にむぎゅうっと押しつけられた胸がシュリの背中でつぶれ、耳をはむっと甘噛みされたところで、シュリの体はサシャ先生の腕にさらわれた。



 「このハレンチな女性は何者です? シュリ君の知り合いですか? どこかで見かけたような気もしますが」


 「ハイ。知り合いデス」



 見かけたような気がする、とサシャ先生が言う通り、2人は一応会った事はある。

 と言っても、自己紹介しあうような会い方では無かったが。



 「私はその子のおばーさんの知り合い、よ。そういうあなたは?」



 アガサの方も、サシャ先生を覚えてはいないらしい。

 まあ、そうだろうな、と思いつつ、シュリはよけいな口を挟まずに2人の様子を見守った。



 「シュリ君のおばあ様のお知り合い。そうですか。私はシュリ君の担任の教師です」


 「ふぅん? 学校の先生、ね。その割には距離が近いんじゃない?」


 「そういうあなたも、おばあ様の知り合いというだけにしては、スキンシップが過剰かと思いますが?」



 2人の間で、バチバチっと火花が散った気がした。

 今にも喧嘩を始めそうなその雰囲気に冷や冷やしながら、シュリはその空気をおさめるために口を開いた。



 「えっと、アガサ?」


 「ん? なぁに? シュリ」


 「僕、フィリア姉様に会いに来たんだけど、いる場所、わかる?」


 「フィリアの? 多分今の時間帯なら食堂じゃないかしら? 付いてきて。案内するわ」



 言いながら、アガサは優雅に身を翻す。

 サシャ先生は、ちょっと不本意そうな顔をしながらも、シュリをぎゅうっと抱っこしたままその後に続いた。


 誤算3人目と4人目は、エルフのリリシュエーラとフィリアの同室のリメラ。

 彼女達は、シュリがフィリアを訪ねたとき、ちょうど一緒に食堂で食事をとっていた。

 シュリはフィリアだけを連れ出そうとしたのだが、おとなしく置いて行かれてくれる2人でもなく。

 結果、アガサが用意してくれた個室で、シュリの目の前に5人の女性が座ることになった。


 正面にフィリア。その両脇にリリとリメラ。その外側にアガサとサシャ先生。

 5人の視線が己に集まる中、やりにくいなぁ、と思いつつも、小さく咳払いをしてシュリはまっすぐにフィリアを見つめた。



 「フィー姉様」



 と呼んだらフィリアのほっぺがぷくっと膨らんだので、



 「……フィリア。落ち着いて聞いてほしいんだけど」



 一応呼びなおしてから話し始める。



 「なぁに? 改まってどうしたの?」



 緊張に表情が強ばるシュリとは裏腹に、フィリアがおっとりと首を傾げる。

 そんな彼女に、伝えねばならない事実を伝えるのはかなりの勇気が必要だったが、言わずにすませることも出来ない。

 まだなにも知らないフィリアの顔を見つめ、



 「僕、王様からのご褒美、というか命令で、フィフィアーナ姫の婚約者になることになったんだ」



 シュリは一息にそう告げた。

 もちろん、他言無用と前置きをした上で。



 「え……?」



 理解が追いつかなかったのだろう。

 こてん、と首を傾げてフィリアが固まる。

 シュリは余分な口を挟まずに、彼女の回復を待った。

 しばらくすると、倒れたままの頭がゆるゆると元の位置に戻り。



 「えっと、それは、シュリの婚約者候補が5人に増える、っていうこと、なのかしら?」



 でも頭は混乱しているらしく、彼女から返ってきたのはそんなあり得ない問いかけ。

 一縷の希望にすがるようなその問いかけに、シュリは胸の痛みをこらえつつ、首を横に振る。



 「違うんだ。フィリア。僕はフィフィアーナ姫様だけの婚約者になる。だから、フィリアや他の姉様達の誰かと婚約するって約束は、なかったことになるんだ」


 「シュリは、お姫様だけの婚約者? 私とは、婚約の可能性も、なくなるの?」


 「そうなるんだ。ごめん」



 深々と頭を下げてから顔を上げると、少しずつ理解が追いついてきたのか、フィリアの目に涙がたまっていた。 

 半ば覚悟はしていたものの、その涙の威力に慌てたシュリは、よじよじとテーブルを上って乗り越え、フィリアの膝の上へ。

 そのまま彼女をなだめるように抱きしめた。



 「無理なねじ込みをしたっていうことは、王様もフィフィアーナ姫ももちろん理解して下さっている。王様は僕の立場を考慮した提案を下さり、僕もフィフィアーナ姫も、その提案を受け入れてくれた」


 「それは、どんな提案なんだい?」



 くすんくすんと泣いているフィリアの代わりに、隣に座るリメラが問いかける。



 「国の後継はフィフィアーナ姫の産んだ子供のみ。正式にそう契約して周知すれば、僕が誰とそうなって子供を作っても、国は関与しない」


 「それって、他の女性との間の子供に継承権は発生しないから、好きに浮気をしてもいいって、公式に認めてくれたってこと、なの?」



 今度の問いかけはリリシュエーラ。



 「そうなるのかな。公式に認めはしないけど、僕が私費で行う事なら目をつぶって下さるそうだよ。だから、ね? フィリア」


 「ぐすっ。な、なぁに」


 「フィリアには2つの選択肢がある」


 「ふ、2つの?」


 「うん、そう。1つは、僕以外の誰かと結婚して幸せになること」


 「シュリ以外の人と結婚なんていや……」



 最初の選択肢にフィリアの涙の勢いが増したので、シュリは慌てて声をあげる。



 「だ、大丈夫だよ。フィリア。選択肢はもう1個あるから!!」


 「もう1個……」


 「1つ目の選択肢は最悪だったが、もう1つはきっといい内容に決まってるさ」


 「そうよ、フィリア。2個目の選択肢は、最初みたいに絶対選びたくない内容じゃないはずよ!」



 しょぼしょぼなフィリアを励ますように、両脇のリメラとリリシュエーラが声をかける。

 そんな2人の言葉にシュリは思う。

 1個目の選択肢だってそこまで悪くないと思うんだけどなぁ、と。


 どんなに好きでも、1人の人を他の女性達と共有しなくてはいけない状況は不自然だと思うし、もし心から愛してくれる人と出会う事ができたなら、その人と結婚して家庭を作った方が幸せなんじゃないかと思うのだ。

 フィリアが他の人を選んで結婚するとなったら、きっとシュリだって寂しい。

 でも、彼女が幸せなら、その結婚を祝福できる。心から。



 「シュリ、もう1つの選択肢、って?」



 色々考えてたら、フィリアからそう促された。

 両脇の友人にの言葉に励まされて、少しだけ気持ちが落ち着いてきたようだ。



 「あ、うん。そうだね。もう1個の選択肢は、結婚は出来ないけど、僕の恋人になること。それで僕との間に子供が出来たら、その子供をルバーノの跡取りにすればいいだろう、って王様が。といっても、この話はアズベルグにいる3人の姉様達にもする予定だから、誰の子供がそうなるかは分からないけど。でもこれは、恋人とはいいつつも愛人って形でしかないし、それよりは素敵な人を見つけて結婚した方が……」


「シュリより素敵な人なんて、この世界中のどこを探してもいないわ」



 諦め悪くあがくシュリの言葉を遮るように、フィリアは言い切った。その瞳は、迷いなくシュリを見つめていた。



 「私を、恋人にしてくれる?」


 「……フィリアは、それでいいの?」


 「いいに決まってるでしょう? 私はずっと……ずーっとシュリに恋をし続けてるんだから。きっと、まだ赤ちゃんのシュリに、会ったその時から。シュリ以外の人なんて、考える余地すらないわ」



 微笑むフィリアの表情はどこまでも甘く。

 まったく。[年上キラー]め。

 シュリは己の罪作りなスキルをののしりつつ、フィリアの頬に手を伸ばす。



 「それとも、シュリは私のことなんて恋人にしたくない?」



 不安そうな表情と声。

 大好きな姉様の、そんな表情も声も、許容する事なんて出来なかった。

 だから。



 「そんなわけ、ないでしょ? 僕はフィリアが大好きなんだから」



 シュリは微笑み、まだ不安そうな表情のフィリアの頬に手のひらを沿わせた。



 「フィリア」



 姉のようにも思い、ずっと慕ってきた人の名前を呼ぶ。



 「僕の、恋人になってくれますか?」



 ええ。あなたの恋人になりたい。

 そう言って嬉しそうに微笑む、フィリアの瞳に涙が浮かび、頬を伝って流れ落ちる。 

 その涙を指先で拭い、そのままそっと、愛を誓うように触れるだけのキス。

 ぎゅっと抱きしめ、彼女から離れると、



 「フィリア、良かったな!」


 「おめでとう、フィリア」



 そんな祝福の言葉と共に、両脇から友人の手が彼女の肩に伸びた。

 涙声でありがとう、と答えるフィリアの声を聞きながら、女同士の友情って素晴らしいなぁ、と密かに感動をしていると、



 「さて、次は私達の番だな」


 「そうね。私達の番ね」



 なにやら順番を主張されたので、シュリはきょとんとして首を傾げる。

 そんなシュリに、リメラとリリシュエーラは非常にいい笑顔で微笑みかけた。



 「私も、恋人にしてくれるだろう?」


 「私も、恋人にしてくれるわよね?」


 「えっと、え?」



 なんでそうなるんだろう、シュリは首の傾きを深くする。

 ルバーノの姉様達についての事しか話してないはずだけどなぁ、と。



 「姫様との子供だけを国の後継者とするんだろう? その条件でいうならば、フィリア達ルバーノの姉妹だけでなく、他の女性と関係を持って子供が出来ても問題はない。国王陛下からも、特にその辺りの制限は付けられていないんじゃないか?」



 リメラの言葉に、シュリは一瞬どう答えようか迷ってしまう。

 誤魔化すことも出来なくはない。でも。



 「ちょっと考えれば分かる事よ。ごまかせるなんて思わないことね」



 リリシュエーラが続けたその言葉に、シュリは観念した。

 彼女の言うとおり、ここで誤魔化してもいつかは分かってしまうことだろう。

 ただ、遅いか早いかの差だけだ。



 「確かに、リメラの言うとおりだよ。でも、恋人になったとしても、当面なにも変わらないよ? 僕は、ほら、まだ子供だし?」



 それでも往生際悪くそう言うと、



 「当面は、だろう? それに、こういうのは気持ちの問題なんだよ。気持ちの」



 分かってないなぁ、と言わんばかりのリメラに迎え撃たれた。

 その言葉にリリシュエーラも頷いて、



 「私達はシュリと何かをしたいから恋人になりたい訳じゃないわ。ただ、シュリと恋人っていう関係になりたいのよ」



 そう続ける。



 「ま、その何か、も出来ることならしたいと思うがね」


 「それは、まあ……そうね」



 それをリメラが茶化し、リリシュエーラが少しだけ恥ずかしそうに頬を染め、そして。



 「で、どうなんだ」


 「で、どうなの」


 「シュリは私を恋人にしたくないくらい嫌いなのかい?」


 「シュリは私を恋人にしてくれないの?」



 2人から声を揃えるようにして問われた。

 シュリは2人の問いを受け止め、小さく息をはき、覚悟を決める。

 これを皮切りに、大量の恋人を抱えることになるであろう覚悟を。



 「別に嫌いでも恋人にしたくない訳でもないよ」



 まずはそう返してから、少しだけ息を整える。

 それからリメラとリリの顔を順に見つめた。



 「リメラ」


 「な、なんだい」


 「リリ」


 「なに、かしら」


 「僕の恋人になって下さい。これから先、2人が僕に愛想をつかしちゃう、その時まで」



 2人の名前を呼び、そう伝えた。

 真剣に、心からの思いを込めて。



 「愛想なんて、つかすものか」



 先に動いたのはリメラだった。

 彼女はフィリアの膝の上のシュリを抱き上げ抱きしめた。


 「この想いはきっとずっと変わらない。いつまでも変わることなく、君のことが好きだよ、シュリ」


 「うん、僕もリメラが好きだよ」


 「……私にもキスを。誓いの、キスがほしい」



 リメラの潤んだ瞳がシュリを見つめ、その唇がシュリを求める。

 シュリは微笑み、彼女の唇に己のそれを重ねた。

 深いキスではなく触れるだけのキス。でも、心を込めて。


 唇が離れ、見つめ合う。

 だが、余韻を楽しむ間もなく、シュリの体はリメラの腕の中からかっさらわれた。

 リメラのところから、今度はリリシュエーラの腕の中へ。

 シュリを追いかけて人の世へやってきた森の妖精は、狂おしい熱の宿った瞳でシュリを見つめた。



 「私はエルフよ」


 「うん」


 「あなたにも長命なエルフの血は流れているけれど、それでもきっと、私の方があなたより長く生きる」


 「そう、だね」


 「でも。それでも。いつか、あなたに取り残されてしまうとしても構わない。これから先、長い長い時の中で。私はずっとあなたを想うわ。あなたに愛想を尽かす時なんてきっとこない。それくらい、あなたが好きなの」


 「僕だって、リリが好きだよ」


 「ありがとう、シュリ。あなたの好きと私の好きの重さが釣り合わなくても、その種類が違っていてもいいの。私の想いを受け止めてくれる、ただそれだけで」



 淡く、でも幸せそうにリリが笑う。

 キスを、とは求められなかったけど、引き寄せられるようにシュリは彼女に口づけていた。

 誓いの、キス。今日この時から、彼女とシュリは恋人同士なのだ、と。


 しかし、今回もまたゆっくり余韻を楽しむ間はなく。

 シュリの体は再びかっさらわれる。

 次におさまったのはアガサの腕の中。

 彼女は悪戯っぽく笑ってシュリにキス。そして、



 「さ、誓いのキスもすんだし、私もこれでシュリの恋人ね」



 そう言い切った。

 そんな強引さが彼女らしい。そう思ってついつい笑ってしまう。

 結果、つっこむタイミングを失ってしまい、なし崩しにアガサもシュリの恋人ということになってしまった。



 (……おばー様がなんていうかなぁ)



 ヴィオラの冒険者仲間とだけはそういう関係になるまい、と思っていたのだが、つい押し切られてしまったシュリは、絶賛第2子妊娠中の祖母を思う。

 アガサがすり抜けてしまった為、他の面々をお断りすることの難しさも増してしまった。

 ナーザは多分断りきれない。断っても聞いてくれないだろうし。

 アンジェは……フィフィアーナ姫の手前、どうあっても恋人関係だけはお断りしないといけないだろう。

 まあ、アンジェの押しは他のメンバーからすると弱めなのでなんとかなる、のではないだろうか。

 その際は、フィフィアーナ姫にも助けてもらおう。

 フィフィアーナ姫だって、アンジェがシュリと恋人関係になるのは困るだろうから、きっと協力してくれるはずだ。

 そんな事を考えている間に、シュリの体は次の誰かの手に渡っていたらしく。



 「シュリ君」



 名前を呼ばれてはっと顔を上げると、そこにあったのはサシャ先生の顔だった。

 怜悧で美しいその顔のあまりの近さに、思わずどきっとしてしまう。

 先生と生徒の関係である2人の距離が、そこまで近くなることは、他の人達に比べれば少ない。

 といっても、サシャ先生に抱っこされることはあるので、無いわけでもなかったが。



 「サシャ、先生?」



 何か言いたいことのある様子の彼女を促すように名前を呼ぶ。

 先生はとても真剣な顔をしていた。

 熱をはらんだ瞳と、わずかに上気した頬にちょっといやな予感を感じつつも、シュリは逃げようとはしなかった。

 逃げて解決する事じゃない、と心のどこかで察していたから。



 「シュリ君は、先生のことが嫌いですか?」


 「嫌いじゃないですよ! 大好きです!!」



 サシャ先生の問いかけに、シュリはきっぱりと答える。

 その答えにほっとしたように、サシャ先生は淡い笑みを口元に浮かべた。

 そして、



 「なら、先生の事も、シュリ君の恋人に、してくれませんか?」



 届けられた次の問いに、シュリは一瞬言葉を失った。どう答えるべきか、その判断に迷って。

 シュリは、先生と生徒という、今の関係に満足していた。

 けれどそれではきっと、サシャ先生は幸せではないのだ。

 悩んだのはほんの一瞬。

 気が付いたときにはもう、頷いていた。



 「いいん、ですか?」


 「はい。サシャ先生」


 「はい」


 「僕の恋人になって下さい。サシャ先生1人だけと言ってあげられない、不実な男ですけど」



 シュリの言葉に、サシャ先生の口元に浮かぶのは柔らかな笑み。

 その瞳が甘く細められ、シュリを愛おしそうに見つめた。



 「それでもいいと、望んだのは私です。ですが、1つだけ訂正させて下さい」


 「訂正、ですか?」


 「シュリ君は不実なのではなく、器が大きいだけです。それは1人の女性で受け止めるには大きすぎますが、沢山の女性を受け入れて幸せにできるだけの大きさも広さもある。ただ、それだけの事です」


 「サシャ先生」


 「そんなあなたを愛せる、そしてそれを受け入れてもらえる私は幸せ者です」



 幸せそうに、彼女が微笑む。

 それにつられて、シュリの口元にも笑みが浮かんだ。



 「シュリ君」


 「なんですか」


 「私達は恋人同士です。敬語は、やめて下さい」


 「わかりま……うん。わかった」


 「それから、あの」


 「うん?」


 「私にも、誓いを頂けますか?」



 キスを、と言い出せずに恥じらう彼女を、愛おしいと思った。

 シュリは微笑み、サシャ先生の頬に手を伸ばす。

 そして、誓いを込めてキスをした。

 こうしてこの日、シュリに新たな恋人が5人出来たのだった。

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