第436話 ただいまの翌日⑨
6人の己の専属の要望に応えきり、全部終わったと思って安心しきっていた。
だが、まだなにも終わりではなかった。
その事実を、シュリは安息の眠りの中で思い知らされる。
眠りに落ちたと思ったのに、妙に意識がはっきりしていて。
誰かに抱き上げられる感覚に目を開けると、目の前におっぱいが突きつけられていた。
何事!? 、と周囲を見回す。
周囲ににこにこしている
寝ている間に拉致されたとかではなく、眠るのと同時に女神様達に呼ばれただけらしい、と分かったから。
(フェイトとヴィーナはあっちにいるから、このおっぱいの持ち主は
なぁんて思いながら、目の前のおっぱいをじーっと見ていると、
「ヴィーナ。シュリがおっぱいを飲まないぞ? 今のシュリはおっぱいを飲みたい気分になってると、お前が言っていたはずだが」
「そぅよぉ? 赤ちゃんの身体になってるから、本能的におっぱいを飲みたくなるはず、なんだけどなぁ??」
ブリュンヒルデが不安そうな声を出し、おかしいわねぇ、と言いながらヴィーナがシュリのほっぺたを指でつつく。
「うわ。なぁにぃ? このほっぺ。もっちもちよ! もっちもち」
「なに? そんなに素晴らしい感触なのかい? どれ、ボクも」
ヴィーナの言葉に呼ばれたフェイトも、身を乗り出してシュリのほっぺたをうにうにする。
「ほんとだぁ。可愛いなぁ。ボクも早くおっぱいあげたい。コレが母性、ってやつなんだね」
「ほんと。わき上がる愛しさに母乳が溢れちゃいそう。後ろがつかえてるんだから、早くシュリにおっぱい飲ませてよぅ」
「わ、分かってる。だが、どうすれば」
「シュリの口におっぱいをつっこんじゃえばいいんじゃない?」
「つ、つっこむ……。こ、こうか?」
頭を支えられたまま、口元におっぱいが押しつけられた。
反射的に乳首を口に含んで、じゅっと吸い上げる。
すると、口いっぱいに薄甘くてちょっとくせになる母乳の味が広がって、シュリは急に空腹感を感じた。
「んっ。こ、これは、なかなか……」
「やだぁ。色っぽい顔しちゃってぇ」
「気持ちいい? ねえ、気持ちいい??」
「うるさい。大人しく順番をまっていろ」
「「……はぁい」」
(ん~と。さっきヴィーナが、赤ちゃんの身体になってるから、って言ってたし、今夜の僕は赤ちゃんバージョンになってるみたいだねぇ)
そう意識してみれば確かに、女神様達がやけに大きく感じられる。
ということは、シュリの身体がいつもより小さい、と言うことなのだろう。
食欲が促すままに、んっくんっくと母乳を飲みながら己の手に目線を動かせば、紅葉のような手が目に飛び込んでくる。
(自分の手だけと、なんだか可愛いなぁ)
なぁんて思いつつ、手を握ったり開いたりしてると、ほっそりとした指が手の平に差し込まれた。
反射的にその指をぎゅっと握り、指の持ち主を見上げると、
「わぁ。にぎったぁ。可愛いなぁ~」
にへへへへ、と女神にあるまじき緩みきった笑顔を見せるフェイトがいた。
「こら、運命の。今は私の番なのだから、シュリにちょっかいかけるな」
「いいじゃん、ちょっとくらい。じゃあ、戦女神は私の順番の時にシュリに指を握ってもらってもいいよ。ならいいだろう?」
「なるほど。交換取引か。ならよかろう。んっ。しかし、コレは、なかなかクるな。は、母親業とはこんな欲望との戦いなのか。母とは、偉大なものだな」
(普通の母親は子供におっぱい吸われて欲望が暴走したりしないものだからね!?)
母が偉大、という意見には賛成だが、その理由には頷けず、心の中で即座につっこみを入れる。
が、そのつっこみがブリュンヒルデに届くことはなく、彼女はしばらく色々こらえるようにぷるぷるしつつ授乳を続行していた。
だが、とうとう限界が来たようで、
「さ、流石に限界だ。名残惜しいが、交代するとしよう。次は、愛と美の、だったな」
甘い吐息混じりにそう言いながら、シュリの赤ちゃんボディをヴィーナにそっと渡した。
「やったぁ。待ってました!! はーい、シュリたん。いい子でちゅね~? ヴィーナママがおっぱいあげまちゅよぉ」
すっかり母親役になりきっているヴィーナは、シュリを受け取るとすぐに、授乳を開始した。
昔を思い出し、赤ちゃん気分になってきたシュリも、なんの抵抗もなく彼女のおっぱいに吸いつく。
「ぁんっ。シュリたんてばぁ。いきなりそんなに強く吸ってぇ。ママをどうするつもりなのぉ?」
どうするもなにも、ただお腹が空いてておっぱいをがぶがぶ飲みたいだけだ。
そう言ってやりたいが、あいにくと口は彼女のおっぱいでふさがれている。
だから言葉を発する代わりに、母乳を飲んだ。せっせと。
お母さんごっこを楽しむヴィーナを悶えさせながら。
結果、早々にヴィーナはつぶれ、床に転がりぴくぴくしているヴィーナの胸から、
「まったく、愛と美の女神はだらしないね。でも大丈夫だよ、シュリ。後はボクが引き受けた。シュリが満足するまでおっぱいをあげるからね!!」
フェイトが意気揚々とシュリを抱き上げ、その口元に己の胸をあてがった。
というか、シュリを己の胸に張り付けるように抱っこした。
フェイトの胸はぺったんこではないが、どちらかというと寂しめなので、授乳をしようとするとそういう形にならざるをえない。
自分は前の2人のように授乳するのは無理だと、早々に悟ったフェイトは、
「ふっ。こんな事もあろうかと」
そんなことを言いながら、あるアイテムを出現させた。
気がつけばシュリの身体は、今の大きさにジャストフィットの抱っこ袋(仮)に包み込まれ、目の前には準備万端のフェイトのおっぱいがあった。
この抱っこ袋(仮)、母親の身体に子供の身体が密着する感じに出来てるので、フェイトみたいな胸に自信のないタイプのお母さんでも無理なく授乳が出来る。かといって胸の大きなお母さんが授乳しにくいわけでもなく、抱っこ袋(仮)の紐の縛り具合を調整すれば、胸が大きかろうと小さかろうと快適に授乳が出来る優れたアイテムなのである。
そんないい仕事をしてくれる抱っこ袋(仮)のおかげで、シュリは無理なくフェイトのおっぱいに吸いつくことができ、
「くぅん。これが赤ん坊にお乳をあげる母親の気分なのか。こんなにも甘美で、子供への愛しさが胸にあふれて」
フェイトは母親気分にひたった。
そんな彼女に、シュリは心の中でつっこんでおく。
(いやいや。授乳って、結構痛いことも多いらしいよ? 僕はその辺りに配慮してるけどさ)
まあ、子供への愛しさが胸に溢れるのは違いないだろうけど。
流石にそろそろお腹も満ちてきたのだが、溢れる母乳を無駄にするのももったいないので、これで最後だと覚悟を決め、せっせと吸ってせっせと飲む。
その無心の行為が、フェイトを追いつめる。
「ちょ! まっ! シュ、シュリ? ちょ、ちょっと激しくないかい? ボク、こう見えて初心者なんだよ? ちょ! んっ。ぁんっ」
「激しい。いいなぁ」
「私から見れば、お主の時も激しかったように思えたがな。さっきまで床に転がって無様にぴくぴくしていただろうに。お、握ったぞ。愛らしいな。愛しくてたまらん」
乱れるフェイトをヴィーナがうらやましそうに指をくわえて眺め、ブリュンヒルデはシュリの手に己の指を握らせて喜んでいる。
「き、きみたちねぇっ!? ひ、他人事だと思って。しゅ、しゅり?? ぼ、ぼく、そろそろやばい感じなんだけどね? ちょっと、加減を……っっっ」
フェイトは手加減の提案をしてきたが、少々遅かったようで。
全て言い終わる前に、びくぅっと身体を激しく震わせ、それからしばらくぷるぷるした後、最後はへなへなと床に座り込んだ。
抱っこ袋(仮)の中のシュリをぎゅうっと抱きしめ、余韻に浸るように荒い呼吸を繰り返した後、
「まったく。ほんと、容赦のない男だねぇ、君は。でも、そこがまた、イイんだけどね」
そう甘くささやいてシュリの頬にちゅっとキスをした。
それを合図にしたように、周囲の光景が曖昧になり。
(あ。夢から覚めるんだな)
そう思った瞬間。
脳裏にアレがやってきた。
・「神気」の一定量以上の接種を確認した為、[神の気をまといし者]の称号を取得しました!
(……女神様達の母乳。アレ、魔力じゃなくて神気だったんだ。そうだよね。神様だもんね。一応、神様、だもん、ねぇ)
称号[神の気をまといし者]の効果がどんなものなのか、見たいような見るのが怖いような気持ちのまま、シュリの意識は遠のいていく。
起きて覚えてたら確認してみよう、そう思いながらシュリは眠りの中へ戻っていくのだった。
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