第271話 サシャ先生危機一髪④
引き続き、サシャ先生が苛められるので、いやな方は無理に読まなくても平気だと思います。
あと、短くてすみません……
次はたぶん長めなのでご容赦下さい。
◆◇◆
耐えるしかないのだ、と分かっている。
都合のいい助けなど、来るはずはないと。
こんな時、助けを求められる相手などいないと、ちゃんと分かっていた。
分かってはいても、それでも心は悲鳴をあげる。
こんな男なんて受け入れたくない。
助けてほしい。誰か。
助けて……
「……っっ。んぅっ。いやぁ」
とうとうその唇から、小さな悲鳴がこぼれた。彼女を押さえつける男の顔に、愉悦の笑みが浮かぶ。
「いやっ……助けて」
「サシャ先生。助けなど呼んでも無駄ですよ。これでとうとう貴方は私のものだ」
「助けて……シュリ、君」
「……遅くなってごめんね?サシャ先生」
答えなど無いと分かっていながら漏らした声に帰ってきた応え。
サシャにしか聞こえない程の声で告げられたその言葉に、サシャは目を見開いた。
次の瞬間、彼女に覆い被さっていた男の体が、一瞬で吹き飛んだ。
バッシュは何が起きたのか分からないといった顔のまま勢いよく飛ばされ、壁に背中を強打してそのまま床にうずくまる。
颯爽と現れ、サシャを助けてくれたその人は、どこから取り出したのか大きな布でサシャの体を覆ってくれた後、
「……怖い思いをさせてごめんなさい。もう、大丈夫だよ。これ以上、怖い思いなんてさせないから」
その唇に再び謝罪の言葉を乗せ、サシャの気持ちを落ち着かせるように髪をそっと撫でてくれた。
どこまでも優しい触れ方に、体の奥の方が甘くうずくのを感じる。
さっきまでとは比べものにならない程の潤いが、あふれ出てくるのが分かり、己の心と体の正直さにサシャはほんのり頬を染めた。
そんな彼女の気も知らず、彼女の愛しい少年は容赦なく彼女の頬を撫で、思わずきゅんとしてしまうような真剣な瞳でまっすぐに見つめてくる。
いつもなら、我慢できる。
理性が圧倒的に勝っている状態ならば。
でも、今は。
サシャは熱い吐息を漏らし、甘く潤んだ瞳でシュリを見つめた。
シュリも、そんな彼女の状態に気づいているのだろう。
心配そうな眼差しを彼女に注ぎ、
「先生? もう少しだけ、我慢しててね? 悪い奴を、しっかり懲らしめて追い出しちゃうから」
そう言って、サシャを安心させるように甘く笑った。
彼がそう言うなら、どんなに辛くても我慢しよう。彼の為に感じる苦しみはきっとどこまでも甘い。
それでもやはり、物欲しそうな顔をしていたのだろう。
シュリはちょっぴり困った顔をして。
それから、すっと顔を近づけてきて、素早くサシャの唇を奪った。
長すぎず、短すぎず、触れるだけでは無いけれど、奥まで触れすぎるほどでもない、そんな過不足のない完璧なキスだった。
うっとりするサシャの頬を再び撫で、
「じゃあ、ちゃちゃっと片づけてくるから、いい子にしててね?」
そんな言葉をサシャに残し、シュリは壁際でまだうずくまっている、意外と打たれ弱いマッチョの元へ、その行く先を定めた。
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