第十八話 宿場町
夕方になる頃、中継地点の宿場町へと一行は到着した。
カイゼルはミフィーの手を取りエスコートしながら一件の宿へ入っていく。
立ち並ぶ宿の中でもかなり高級そうな宿だった。
中に入ると宿の主人がもみ手をしながら飛び出してきた。
「これはご領主様。今日はどういったご用事で?ご宿泊ですか?」
「この先の街道でおきた事件の検分をすませてきた帰りだ。皆疲れているので部屋と風呂の準備を頼む。2人部屋が2つと、大部屋を2つ確保したいが空いているか?」
「はい。空いておりますとも。風呂の準備はすぐに?」
「ああ。ここは湯殿が2つあったな?男女で別の湯殿を使いたいが、問題ないな?」
「かしこまりました。では、部屋はすべて2階にございます。鍵は、2人部屋のものが2つと、大部屋のものが2つ、こちらになります。お食事は運びしましょうか?」
「2人部屋の分は運んでくれ。大部屋の者達は食堂で取らせるようにする。朝食も同様で頼む」
「はい。かしこまりました。まずはお食事をお運びして、お風呂はその後入れるように準備致します」
「分かった。急に大人数で押し掛けてすまんが、よろしく頼む」
カイゼルは鷹揚に頷いて、部屋の鍵を受け取った。
そのうちの2つ、大部屋のものをまず兵士達のうちの1人に渡した。
「部屋割りは適当に考えてくれ。もうじきジャンバルノも追いついて来るだろうが、もし来たらわしの部屋に来るように伝えてほしい」
「はっ、かしこまりました」
「それから、カレン」
「はっ」
「お前はミフィー殿と同じ部屋で色々と手助けをしてやって欲しい。頼めるか?」
言いながら、カイゼルはカレンに2人部屋の鍵を手渡した。
「はっ、もちろんでございます」
カレンは押し抱くように鍵を受け取り、ミフィーの側へ駆け寄った。
「ミフィー殿、困ったら何でもカレンに言いつけてくれ。わしも、隣の部屋にいるから、何かあったらいつでも訪ねて欲しい」
「は、はい。ありがとうございます。何から何まで……」
「気にすることはない。貴方はわしの大切な弟の嫁で、可愛い甥っ子の母親なのだ。大事にするのは当然だ。明日は、アズベルグまで移動する事になる。今日はゆっくりと身体を休めてほしい」
カイゼルはミフィーに微笑みかけ、それからシュリの顔をのぞき込む。
弟と同じ色のつぶらな瞳がカイゼルを見上げ、心を和ませてくれた。
カイゼルは手を伸ばし、そっとその柔らかな髪を撫でて口元をほころばせた。
それから一同を見回し、
「では、明日の出立の時間まで解散とする。時間は追って知らせよう。みな、ゆっくりと身体を休めるように」
そんな指示を出す。
兵士達は皆敬礼し、それを満足そうに見回して、カイゼルは自分の部屋へと向かうのだった。
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