第6話初冬の庭を眺めるリリ

初冬の庭を眺めるリリ

9月 21日

朝からどんよりした空。

鈍色の空からは、いまにも冷たい雨が落ちてきそう。

庭の木々は落葉が始まっている。

もの寂しい冬の雰囲気になってきた。

淋しさを漂わせた庭にバラが咲いている。

しばらく脱走に成功しないリリ。

外にでたくて窓越しに庭を眺めている。

可哀想なので、外に出してあげたいが、そこは心を鬼にしてジッとこらえる。

諦めたのか食器戸棚の上でわたしの仕事を見つめていたがいつのまにかお休み。


秋の風情に寄り添って

11月 21日

今日もあまりはっきりしない天気。

陽が射してきたと喜ぶと、たちまち黒い雲に覆われてしまう。

庭におりる。

ここ数日雨の日がおおかった。

雨水をたくさん吸い庭の土は真っ黒に濡れて大地の匂いがする。

バラが秋の風情に寄り添うように咲いている。

優しい香りをあたりに放って。

バラの香りは言葉で表現するのは難しい。

香りはバラのおおきな魅力です。

秋バラは少しずつ花びらを開花させ長く楽しませてくれる。

リリが来てからバラの手入れが怠り気味。


昨年、体調をくずしてバラの鉢の土替えができなかった。

鉢土が硬くなって今年は土を入れ替えなくては……心が重い。


落葉の道を歩く

11月21日

カーテンの隙間から光が射しこんでいる。

心地よい目覚め。

久しぶりに朝から快晴。日の光を見ると元気がでる。

爽快な気分で寝床から飛び出す。

リリも後から起きだしてアーチをつくりノビノビをしている。

天気予報ではまた午後から曇るらしい。

朝のうちに洗濯をすませ、買い物に。

初冬の澄みきった大気。ピンと空気が張りつめて心地いい。

街路樹のハナミズキがすっかり葉を落とした。赤い実だけ残している。

「鳥たちがこの赤い実をついばみにくるのかしら」

いつもの散歩道は枯れ葉が、地面が見えないほどおおっている。

子供のように、枯れ葉とたわむれる。夫と枯れ葉を踏みしめながら歩く。

乾いた音を聞いていると深い森の中を散策する風情がある。

日光で森の中を歩いた感覚がよみがえった。

枯れ葉の道が終わる歩道の端に一本のモミジがあった。

緑、黄色、オレンジ、赤と多彩な色でモミジの葉が樹木全体を染めあげていた。

モミジの葉が透きとおって陽のひかりが抜けていくようだ。

見上げる天空は青い初冬。白い月がでていた。


大人になったリリ

11月24日

最近のリリはボールを追いかけるが、咥えてこなくなってしまった。

大人になったのだろう。

よろこぶべき成長なのだろうが、少し寂しい。

かくれんぼは大好き。

イスの陰や、カーテンのかげに頭を隠して尻尾がはみ出している。

思わず笑いが込み上げる。

わたしが襖の陰に隠れる。

カーテンの隙間からうかがってそぅっと忍び寄ってくる。

何とも仕草が可愛い。

わが家に迷い込んできてからかれこれ一年三ヶ月になる。

幼子が増えたように笑えが絶えない。

今までは、夫とブララッキーとわたしの静かな日常だった。

ブラッキーは静かな知性さえ感じさせる猫。

いつも夫のパソコンの傍らで静かに鎮座している。

猫といっても、それぞれの行動パターンがちがうのでおもしろい。


リリ頑張ろうね…

12月19日

リリの食欲がない。医者に連れて行った。

血液を作ることができなく、このままダメになるかもしれないといわれた。

点滴、注射、薬、やっといつものリリに戻った。

血液中のたんぱく質が高い、血液の数値も最低値に達していないが元気に飛び回っている。


昨日はひさしぶりに所用で東京。師走の街をそぞろ歩きしたかったのに、とんぼがえり。

リリとブラッキーのことが心配で早帰り。

山上憶良の「今は罷らむ子泣くらむ――」の心境。

夕暮時の薄明の中、家路につく。

リリは部屋を走り回り最大限の歓迎でわたしを迎えてくれた。


「あなたしあわせ?」今朝になって、夫にきいてみた。

「わたしは、リリがいて、朝からジャズを聴いて、コーヒーがのめてしあわせ」

「三人の美女にかこまれ、ウォルドロンのピアノ、マリアーノのサックスが聴けてごきげんだよ」

「わたし、レイジー・デイがすき」

 カフィンの作用で身体がモノウク、こころは異次元に遊び、朝のひととき……霧のなかを漂っているようだった。注。リリもブラッキーも女の子です。


猫ちゃん騒動に明け暮れて

1月11日

今年もよろしくお願いします。


暮れにかけて猫ちゃんたちにきりきり舞いさせられた。

PCに向かって電源を入れたが反応がない。

見るとACアダプターがブッリかじられていた。

リリの仕業、コード類をかじるのが大好き。

暮れから正月にかけて会社は休み。

このPCを買った量販店に依頼したが埒が明かない。

時間はたつばかり。PCは使えない。

弟が見かねてヤフーで検索。

やっとSONY VAIOに対応するアダプターを見つけてくれる。

おめでたいこともありましたよ。

暮れに六人目の孫が誕生。

女の子です。昨日会いにいってきました。


ブラッキーは疥癬になる。

痒いのがつらく外にでたがって大騒ぎ。

出してあげるとすぐ戻ってまた出たがる。

夫はブラッキーと同室に居るので移され皮膚科に行く。


リリは食欲がなくなり眠り続ける。

二匹を交代に獣医さんにつれていく。

リリは造血剤を注射したので少しずつだが血液の数値はよくなっている。

毎日薬を投与。でもいつまた数値が落ちるかわからないといわれた。

血液中のタンパク質がなかなかさがらない。

骨髄に異常、再生不良性貧血、免疫不全……

いずれかはっきりしない。

それでも前のように元気に走りまわっている。


末弟を亡くした昨年から今年にかけて、人間も動物も命のはかなさを感じました。

いろいろありすぎててんやわんやの正月でした。


バラの土替えをしながらリリと遊ぶ

1月14日

やっと重い腰をあげてバラの土替えを四鉢した。

昨年、体調が悪く土替えができなかった。

土が固まって鉢から抜くのがたいへんだった。

まだ十数鉢ある鉢の植え替え。

あせらず暖かい日を見はからって頑張らなくては。

ちょっと目を離すとリリが土の中にでんと腰を据える。

色々なものに興味をしめすリリ。

茶目っ気たっぷりのリリを見ると目頭が熱くなる。

「リリ頑張って、病気に負けないでね」

いつもはお昼寝している時間。

わたしにつきあって疲れたのか、お気に入りの一番高い棚の上でお休み。

必死に狭い棚板にしがみついている様子が笑いを呼ぶ。


雪の朝のひと時

1月18日

今朝も、リリに起こされた。

頭をぽんぽんと叩かれる。

リリちゃん目覚ましで起きてみると、静かだ。

この静かさは雪の朝かしら――やはりそうだった。

夫はすでに起きていた。

暖まっているキッチンでジャズをかける。

レコード盤に針を落とすときの緊張感。

チック・コリアとゲイリー・バートン「クリスタル・サイレンス」雪の朝によく似合う曲だ。

しばらくぶりで買ってきたコーヒーを挽いて飲む。

こんな雪の日はジャズを聴き、コーヒーを飲み至福のひと時を過ごす。


敬愛する山口仲美先生

1月23日

どんよりとした灰色の空。

庭の夏椿の薄若草色の花芽。

沈丁花のえんじ色の花芽も寒さに凍てつきそう。

この冬一番の寒さ。

リリとブラッキー、夫も一仕事を終えて炬燵で仲よくお休み。

一人朝食をすませる。

山口仲美先生のエッセイをPCで読む。

NHK100分de名著「枕草子」ですっかり山口仲美先生のファンになった。

お年より若々しく可愛らしい先生。

講義もユーモアがあって楽しい。

過去に大病を患ったと思えない。

あの明るさは学問を突き詰めた人のものなのだろう。


心がいたむリリの通院

1月25日

「さぁ 行こうか」と夫がわたしを呼びに来る。

いそいで身支度をする。

今日はリリを医者に連れて行く日。

キャリーバックをリリに見せないように用意する。

だがリリは察しがついたのか窓際の棚の隅に隠れる。

夫が外から窓を叩く。

今度は本箱の上に逃げ込む。

やっとリリを捕まえてキャリーバックへ押し込む。

観念したのか悲しそうな声でキャッと鳴く。

リリは普通の猫のようにニャオーと鳴けない。

「身体が弱いぶん頭がいいのかしらね」とわたし。


リリを入れたキャリーバックを持って、車の行きかう道を急ぐ。

リリは車の音が嫌い。時々声をもらす。

血液検査の結果は思わしくない。

数値が下がっている。

免疫不全のため造血剤を打つか、薬を変えてみるか、とのこと。

とりあえず薬2週間分をいただいてくる。

でも、リリは元気に飛び回っている。

とても病気の子とは思えない。

無邪気に遊ぶリリが愛おしい。

体重が減少したとき、元気がないときはすぐ来院するようにと。

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