第10話:夏の知らせ

 朝、いつもの六時より一時間早く五時に起きた。

窓を開けっ放しで寝てたからかどことなく部屋の空気が澄んでいる。

 起きてすぐ、手の違和感に気がつく。

どうやらストラップを手に握りっぱなしで寝ていたらしい。

手を開くと相変わらずそれはキラキラ光っていて。

 このままじゃ勿体ない気がしたので自分の真っ白なガラケーに付けてみることにした。

携帯が白いからか青いガラス玉がよく映えている。

 携帯を鞄の内ポケットにしまった後、クローゼットを開けて制服を身にまとった。


 白をベースとしたシャツに紺色のえりと赤いリボンがついたセーラー服。

紺のハイソックスを下の引き出しから手に取り、脚に通した。

 いつまで経っても高校生になった感じがしなくて

制服を着て鏡を見る度に違和感を感じる。

 制服が届きたての頃親に見せたら

「良く似合う」と言われたものだけど。

 入学当初肩までだった焦げ茶色の髪はもう胸のあたりにまで伸びていた。

それを高い位置に素早く一つに縛る。


 身支度を終えた頃にはもう五時半になっていた。

 二階の自室から一階のリビングに降りて、

適当な食パンをトースターに放り込んだ。

コップに注いだ牛乳と母の手作りの苺ジャムを机に置く。

小麦色に焼けたトーストにジャムを塗って一口齧かじった。

もぐもぐとしたままテレビをつけると、

笑顔が可愛らしい女性アナウンサーによる

天気予報のコーナーがやっていた。

 私の地方はもう完全に梅雨明けらしく最高気温が三十度を超えるそうだ。


「そういえば今日から水泳じゃん。

 ……水着どこやったかなあ」


 食事を終えてテレビを消した後急いで上に

上がってタンスの中から水着を掴んで、水泳バッグへがさつに入れた。

 顔を洗い歯を磨き、二つのバッグの持ち手をしっかりと握って外へ出る。


 雲一つのない青空にさんさんと降り注ぐ太陽、

この間まで鮮やかだった紫陽花の紫色もくすんで来ている。

確かに天気予報の言った通り梅雨明けに間違いない。

 自転車のかごにバッグを詰めて自転車をキーキーと鳴らし、いつもの畦道を通り右に曲がって緩やかな傾斜の坂を登った。

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