歯車はいつも噛み合わないⅪ‐④

 メーアの元に転がり込んだ君を始めて見た時、君は僕に初めましてと言った。でも、僕ははじめましてなんかじゃなかったんだ。君とはもっと前に会っている。君は覚えてないし、今の記憶も消えるだろうから、言っても無駄になるけど――。僕は君の両親も、僕の恩人であった君のおじいさまも殺して、いざとなれば殺せと命じた主人の為に、君を魔王にできなかった。


 仕方なかった。幼かった君さえ助かれば、また――。


 僕の当時の御主人様は、この力の恐ろしさを理解していた。だから僕に頼んだんだ。君は知らないだろう。君が生まれた時、僕はそばにいた。僕は君のおじいさんの従者だったんだ。


 あの――、城が崩壊する日も、僕はあの場所にいたよ。


 僕はさ、そこで何を見たと思う?


 ねぇ――。




 君は、僕のことを覚えていないと思うけどね。

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