第171話:試されすぎる、絆。③
ロゼを守り、育てあげる。それはジェノスタイン家のみならず、フェニキアの将来を作ることになる。ジェシカは凜に言われたことを思い返していた。
ジェシカとしては凜が純粋に「人間」だけで旅団を作って
凜は首を振った。
「ジェシカさん、それは違うよ。それじゃ意味が無いんだ。僕は自由と平和のために戦う意志を、改めて人類に遺したいんだ。そう、強い意志を持った人間をね。
遠い昔、ぼくの先祖の国である大和国で、『明治革命』という出来事があったんだ。その革命戦争も武士から兵士の戦いへと変化をもたらした戦争の一つだった。その革命の英雄の一人はこう言ったんだ。
『財(財産)を遺すは下なり。業(業績)を遺すは中なり。人(人材)を遺すは上なり』。当時、大和国は危機に面していた。西洋諸国に植民地としてむしり取られ続ける運命に陥りかけていたんだ。でも、そこから一気に列強の一角へと駆け上がったんだ。つまり、最も重要な社会貢献は、人材を育てることなんだ。
だから、ジェシカさんが今取り組んでいる仕事は、人としてとても大切だと思うよ。」(作者註:後藤新平の言葉だそうです。)
「そうね。そういってもらえると嬉しいわ。」
だからジェシカも心に誓った。私も戦う。自分の背中を見る世代がそこにいる限り。とりあえず、オファーの件は胸にしまい、明日へ備えることにしたのだ。
[星暦1554年8月25日。副都ポートランド。選挙大戦一次リーグ第2戦。宇宙港管理騎士団・衛門府、(ホーム)対 聖槍騎士団。]
ポートランド王立闘技場は満員御礼であった。開幕戦で見せた
聖槍騎士団は第1セットの
第2セットの
「奇遇ですね。」
昨日のジェシカの挨拶をそのまま弁慶が返した。
開始の礼を交わすと互いにフィールド上を螺旋を描きながら上昇する。
ジェシカは愛槍である「
「エゴイスト。」
ジェシカが第一の
「さすがは『猫夜叉』、速く、しかも強い。ではこちらも遠慮なく。『Oh,Lord,Stand by Me』!」
弁慶もやはり同様に
残像を残し、二つの影が激突する。ジェシカは体力よりもスピードの増強にパラメーターを振っているので一撃離脱の態勢だ。弁慶がジェシカの一撃を軽々と食い止める。
(一撃にしては⋯⋯軽いか。)
ジェシカはスピードに乗って二撃目を加えるがこれもいなされてしまう。薙刀は振り回す武器であるがゆえに、一騎打ちから集団戦法に時代が移り行く際に消えてしまったが、一騎打ちの騎士の戦い、とりわけ空戦ではもっともその能力を発揮する。ジェシカといえども、おいそれとその制空圏内には入れそうもない。
「こちらもギアを上げさせていただきます。『Joy to the World』!」
弁慶が
「『プワゾン』。」
ジェシカが第二の
「やりますねえ。巴御前もびっくりの強さです。『Power(パワー) to(トゥ) the(ザ) People(ピープル)』!」
弁慶が第三の
「速さだけでは勝てませんよ。お嬢さん。」
ただ、ジェシカがスピード強化に重点を置くのも彼女なりの意図があるのだ。
「どうかしら? 『
突如、弁慶の周りに巨大な空中庭園が現れる。これは建造物を模した巨大な重力枷であり、相手を障害物のある空間に閉じ込めることによって、相手のスピードを完全に殺すことができるのだ。いわゆる「
「これは驚いた。とんでもない大技ですね。さすがに『天位』は伊達ではないようですね。」
この庭園の持つその美しいビジュアルと裏腹に、弁慶は四苦八苦させられる。なにしろ、これが見えているのは弁慶と観客だけで、ジェシカにはただの空間に過ぎないのだ。ジェシカの攻撃が面白いように当たる。しかし、弁慶の体力がスキルによってかなり上昇しているため、ライフゲージを削っていくのにどうしても時間がかかる。
しかし、死角である噴水やら石畳の下からでも変幻自在に現れるジェシカに弁慶も焦りを抱きはじめた。
「これは出し惜しみをしている場合ではないようです。『Amaging(アメイジング) Grace(グレイス)』!」
弁慶の第6技が発動すると天から光が差すようなビジュアルが起こり、空中庭園が崩れていった。これは「
(しまった。)
今度はジェシカが無防備な状態でさらされる。「庭園」技は大技であるゆえに、自分の防御力をほぼつぎ込んでしまう技なのだ。ジェシカの立て直しを弁慶は許さない。
「最終奥義。『千本桜』。」
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