第3話 付喪神も叩けば直る?
黒い箱の正体はブラウン管テレビだった。しかも、側面と下側から筋肉質な毛深い手足が生えている。
「ブラウン管テレビの付喪神?」
「コレってテレビで言ってた通り魔か⁉」
「捨テラレタ恨ミ、晴ラサデオクベキカ」
「危ないから、俺の後ろに下がってろ。それと警察を呼べ」
レジ袋を置き如月を庇うようにして、テレビ付喪神と対峙する。
「今の時代は薄型テレビなんだよ‼」
テレビの側面を蹴飛ばした。だがテレビ付喪神は少しよろめいただけで、傷ひとつつかない。
「古い割には、けっこう頑丈じゃねぇか」
「メイドイン……ジャパン」
「なるほど、さすが日本の技術力だな」
すると、テレビが殴りかかって来たが俺はそれを難なく避ける。目標を失った拳はブロック塀を粉砕した。
「こんなの喰らったら、ひとたまりもねぇ」
やはり妖怪、威力が人間と比べものにならない。こんなヤツに勝てんのか俺は。
「寅くん‼ 」
「通報できたか!? 」
「それが、充電切れてて…」
「授業中いじってたからだろアホ‼ 俺の使え‼」
テレビの猛攻を躱しつつ、ポケットからスマホを取り出す。そしてタイミングを見計らい、如月に向かって投げた。
スマホは放物線を空中に描き、如月の両手にしっかり収まった。
「よっしゃ‼ 早くそれで通報して」
「寅くんごめん‼ 」
「今度はなんだ!? 」
テレビ付喪神の顔面もとい画面を蹴飛ばして距離を取り、如月の方を見た。
彼女の手にはバキバキに割れた俺のスマホがあった。
「取った時に力入れすぎて壊しちゃった!! 」
「こんの馬鹿力がぁ!!!! 」
唯一の連絡手段が断たれちまったぞ、おい。しかも味方のせいで。
「如月、どうにかして警察呼んで来い!! 」
「でも寅くんが…」
「俺のことはいいから早く行け‼ 」
如月が走り出すのを足音で確認し、テレビ付喪神の蹴りを躱した。このままではらちが開かない。その時ふと、俺が小さい頃の記憶を思い出した。
お母さんはブラウン管テレビの側面をチョップしていた。
『何してるの?』
『壊れた機械はね叩けば直るの。コツは斜め45度よ』
『ふーん、そうなんだー』
「ものは試しだ、斜め45度で叩く‼ 」
テレビ付喪神の側面に手刀を叩き込んだ。すると、一瞬テレビの動きが止まった。
「やったか?」
「ソレハ迷信、逆ニ故障ノ原因」
「んな訳無かったー‼ 分かってたけど‼ 」
それからしばらく攻撃を回避しながら反撃しを繰り返していた。疲労が出てきたのか、避けるのも精一杯になってきた。だがテレビ付喪神は動きが全く鈍ってない。
「まさかコイツ、疲れとか痛みとか感じねぇのか?」
もしそうだとしたら、ヤバい。長引けば長引くほどこっちが不利なる。 倒してしまえば話は早いが、その望みは薄い。
俺がへばるのが先か、警察が来るのが先か
「ったく如月のやつ、今頃なにしてんだよ」
次の瞬間、俺の横を風が通ったかと思いきや、金髪スーツ姿の中年男がテレビ付喪神の後頭部に強烈なかかと落としをお見舞いしていた。
テレビ付喪神は地面に叩き付けられ、金髪男に踏みつけられたままだ。その男をよく見れば頭には髪と同じ金色の狐の耳、お尻には金色の狐の尻尾が生えている。
「旦那、ケガはございやせんか?」
「は、はい」
金髪男のあまりの迫力についたじろいでしまう。
「金野、なに怖がらせてるんですか? ただでさえ顔怖いのに」
声のする方を向くと、そこには長い黒髪を一つ結びにしたメガネ女子が俺の方へ歩いて来た。
「私たちが来ればもう大丈夫ですよ」
「あなた達はいったい?」
メガネ女子は一枚のお
「可愛すぎる陰陽師『はるるん』こと、
「そしてあっしは晴瑠お嬢の式神、
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