第2.5話〈保健室〉

  「七海、変です」

  七海の顔をぼんやりと見つめながら佳乃が言う。その声が儚すぎて、おそらく佳乃自身も、自分が言葉を発したのを気付いてなかったろう。

  「うふ」

  くちびるの両端をつり上げて、七海はいきなり佳乃の顔に近づく。

  またもやキスをした。

  くちびるとくちびるが重なる瞬間、さっきまでのやんちゃなキスがふっ飛んで、今度は激しい接吻へと変わった。

  「はむ、んんん、ふぁ」

  「んん、んふ、むちゅ、んん、っ~~」  

  七海のくちびるが、乱暴に佳乃のくちびると擦り合う。七海の舌がなんの告げもなく、佳乃の上唇と下唇を縫う隙間に強引に突進し、佳乃はそれに抗えもできずに、口の中を七海の舌が容赦なく暴れまくりされる。

  これはさっきとは金輪際違う感覚だった。意識が真っ白になり、「自分」という単語も跡形もなく吹き飛ばされる。

  気付けば、自分の舌がいつの間にか七海のくちびると絡め合い、口の中に何度もひっくり返す。七海の口から、唾液がだらしなく佳乃の口に流れ込む。佳乃はそれを喉に飲みこみながら、自分の唾液も七海の口に送り、二人の唾液が舌の周りに激しく溶け合う。

  「んん、ふぁ、んっ、っっっ」

  口から淫らな嬌声が漏れる。それが自分が発した声だと、佳乃はこの狂おしい行為からやっとの思いでそれを気付く。自分がこんなにもみだりがわしい声が出せるとは思わなかった。

  絡める二人の左手がいつの間にかほどいていた。

  「ナナ、みっ?ひゃっ」

  制服の下に、七海の手が入り込み、腰の曲線に沿って、乳房まで登って行き、ブラジャーの下に潜り込み、やがて佳乃の右の方の乳房を鷲掴みにする。

  手のひらが乳房の上に滑りながら、人差し指の指先が乳首を突く。

  「いやっ」

  敏感なとこを触られ、佳乃の腰がは七海とのディープキスから抜け出そうとし、くちびるを離れていくが、七海は素早く右手で佳乃の頭を押さえて、再び舌を佳乃の口にさし込み、中に乱暴にかき回す。

  「ん、ぃやっ、あんっ、んん、っっ」

  佳乃の乳房の柔らかい膨らみに七海の指が強く食い込み、乳首をぐにゃぐにゃと弄ぶ。

  いまの自分のこの姿を、お父さんに見られて、どんな言葉を浴びることになるでしょう。

  「信じられん。お前はなんて淫乱で、卑猥な女なんだ。今この場で殺めてほしい」

  怒られる程度のものじゃない、きっとお父さんは本気で自分を殺しうる。だって、お父さんはそういう人種ですもの。子供に対して自分の中にある種の歪な理想像を作り、だけどそれが歪であることを自分から気付いてなくて、それを子供たちが達してくれないと自分の価値観が否定されてる被害妄想が起こし、子供に八つ当たりしてしまう。

  じゃ、七海は?七海はどうする。自分のこんな淫らな姿を見せられたら、七海はどう振る舞う。

  二人のくちびるがやがて離れていき、首と制服の襟にまだ唾液が垂れたあとがのこってる。

  七海は何も言わずに自分の制服のボタンを解きはじめ、肩まで脱いだ。シンプルなデザインのピンクのブラジャーと飾り気のない白い肌が完璧なコントラストになり、とても目に映りのいい風景である。

  そのシンプルなエロさに、佳乃は同性でありながらうっとりと見つめてしまった。七海の素肌を見るのが、これで二度目だ。

  「七海?」

  「佳乃、もっと欲しい」

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