第42話
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「チッ、何やってんのよ!」
毒づき、シグナルブックのホログラムを消した由羽は、ベッドに寝転がった。
時刻は九時を少し回った所だ。十分な睡眠を取り、シャワーを浴びて、シグナルブックで昨日行われた光輪祭の一回戦をニュースで見ていたのだ。
「ヨウの奴、生身だからってソフィアリアクター程度に瞬殺されてんじゃないわよ!」
ヨウが開始早々やられたことを、由羽は自分の事のように腹を立てていた。
乙姫の未来視でヨウの映像を断片的に見ることはできたが、久しぶりにちゃんと見るヨウは昔の面影を残しつつも、大人になっていた。乙姫のような贔屓目で見なくても、ヨウの容姿は女性の目を惹く。何よりも、あの宝石のように輝いていた瞳は、年を取っても変わることはなく、それどころかより強い輝きを放っていた。
今にすぐヨウに会いに行きたいが、流石にそれは無理だろう。明鏡から与えられた任務は魔神機の復活阻止。由羽がここに来た理由を知れば、ヨウは魔神機に近づくだろう。彼と魔神機の接触が何をもたらすのか、由羽にも乙姫にも想像はできないが、良い結果にならないことだけは確かだ。此処に眠る魔神機は、前回の魔人戦争の折、傀儡についた魔神機なのだ。復活しないにしても、ヨウに悪影響を与える可能性は大だ。
「まあ、彼一人なら魔神機にはたどり着けないだろうけど……」
問題はレアルだ。レアルと一緒にいるコビーは此処のセキュリティを作り、更に、彼のソフィアがあれば大抵のセンサーや人の目を欺くことは可能だ。ジンオウと同じく、コビーも何をするか分からない。
「全く。私が出て行ければ楽なんだけど」
由羽の心配は的中し、すでにヨウと魔神機が接触したことを、彼女はまだ知らなかった。
「お姉様! 大変です大変です!」
美和が大声を上げて部屋に入ってきた。
「何よ? 大声を出して。頼んでいた物は買ってきた?」
ベッドから身を起こした由羽は、美和に手を伸ばす。美和は「あっ、はい!」と、紙袋を由羽に手渡す。
「大変なんです! 本当に大変なんです!」
「何よ、大変って……」
由羽は紙袋を開ける。紙袋の中には、ハンバーガーとフライドポテト、それとバニラシェイクが入っていた。明鏡では滅多に食べられないジャンクフードだ。左指を上げて美和の言葉を制した由羽は、話を聞くよりも先にハンバーガーを頬張る。
脂っこいパテと、安いボソボソのパンズが由羽の渇きを癒やしてくれる。明鏡の食事は、どれもが整っていて、面白みに欠ける。店はある物の、小料理屋がある程度で、ジャンクフードを売ってる店はない。由羽と美和は、任務で明鏡を離れる際は、明鏡では口にできないジャンクフードを漁るように貪り食うのが慣例となっていた。
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