3-ご報告


それから数週間後僕は体調を崩した。

頭痛とだるさ、なにもしたくなかった。風邪でもひいたんだろうと思って、仕事にもちゃんと行ったし、そのうち治るだろうと思っていた。でも、2週間たってもなかなか治らない。おかしい。仕事に支障がでないか心配になるくらいだった。そのとき気付いた。もしかして・・・僕は薬局に行き検査薬を買って、意を決して、検査薬をやった。待たずに陽性だった。次の日は日曜日だったが、確証を得たくて、少し遠かったが休日診療をしているところにいった。間違いなかった。

僕が24歳の5月のことだった。

この瞬間、僕の2つに分かれていた人生が、一つになった。


次の日、出勤したと同時に彼に連絡した。「大事な話があるから、話せますか?」仕事が終わるころになってから、「飯でもいくか?」と返信があった。彼はラーメンが大好きで、一緒に食事をするときはほとんどラーメンだった。その日も彼のセレクト。気持ち悪くて食べられないだろうなと思いながら、待ち合わせの場所へ向かった。僕はなんと切り出していいかわからず、ためらっていると、

「どうした?妊娠した?」

と彼のほうから切り出してくれた。私は驚き、

「あ、うん。なんでわかったの?」

「大事な話っていったらそれくらいしかないでしょ。てか、大丈夫なの?ラーメンとか食えるの?」

と気遣ってくれ、

「いや、やっぱりラーメンとか食ってる場合じゃないからいくよ。」

と車で話すことにした。そこで、今後どうしていくかの話し合いをした。正直、僕にも実感はなかったし、確かに僕が選んでいたうちの一つの道だけど、この先どうなっていくのかは、僕にも全然想像がつかなかった。次の日も仕事だし、この日は遅くならないうちに帰宅した。


今後どうするかも大切だったけど、もう一人話さなきゃいけない相手が。母だ。いつ話そうかと仕事中もずっと考えていたら、あることに気付いた。普通は会ってほしい人がいます、結婚します、子どもができました。がまぁ一般的。もしくは、子どもができました、結婚します。だと思う。でも、僕の場合、自分がGIDだと告白してそのあとは母と深い話をしていない。とういことはいきなり、妊娠したなんて驚くどころの話じゃない。なぜあれから深い話をしていなかったかというと、あのあとすれ違いが生まれていた。別に誰が悪いわけでもなく確認しない僕が悪かったのだ。妹の周りにも僕のようにGIDの子がいた。その子の話をしたとき、「その子の両親はすごいね」や「女の子として生まれて育ててきたなら女の子として生きてほしいんじゃないかな」などと言っていたと妹から聞いた。そして、母が弟や妹に、僕が男として生きていくことをどう思うか聞いたこともあったそうだ。僕はそれを聞いて、そうか母は女性として生きること望んでいるのか。やっぱり受け入れられないんだ。と勝手に思ってしまったのだ。あの時受け入れてくれはずなのに。そんなこともあって、あれ以来大事な話はなにもしていなかった。


もちろん僕がそんなふうに考えていたことも、そうやって行動したこともなにも知るはずもなかった。だから、冷静に考えて驚くだろうし、反対されると思った。どこから話すか、どうやって話すかを考えていた。そんなことを考えているうちに時間はすぎ、母に連絡できないでいた。そうしているうちに母のほうから連絡があった。話したいことがあるからと。その日の夜母と電話することになった。それでも切り出せない僕に、母は「なにか話さなきゃいけないことがあるんじゃないの?」と。そして、やっと切り出すことができた。

「子どもができた。」

母はそこで問い詰めることはなく、「相手は?」とそれだけ聞いて、

「わかった」とその日はそれで終わった。

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