5-理屈じゃないよ、本能かな


もちろん、もし治療を進めても一生家族がもてないわけじゃない。

医療技術の発達によって、子どもをもうける選択はいくらでもある。ただ、自分の血は繋がってない。そこはそんなに重要じゃないだろうと思う人もいると思う。でも、僕にはそれが重要だった。理由を聞かれてもそれは、答えられない。だって、理屈じゃないから。普通の恋愛をして、結婚したカップルでもそうでしょ?どうしようもない理由、例えば病気とかそういう理由がない限り、自分の血の繋がった子を望むと思う。僕の気持ちはそれと同じ。僕も男や女である前に、1人の人間だから、きっと本能的に自分の遺伝子を残したいというのがあった。だから、どうしても自分の子を諦められなかった。


本当の自分を追い求めて、社会的にも認めてもらうのか、それとも自分の血の繋がった子を選ぶのか。治療を開始するのに、遅すぎるとういうことはないと思うけど、やっぱり体にメスをいれたり、負担のかかることをするわけだから、早いに越したことはなかった。だから、僕だっていつまでも悠長に悩んでる時間もなかった。


ただ、僕が欲張りなだけだった。昔からそうだった。欲しいと思ったものは全部ほしくなる。手にいれたくなる。そんな性格だから、こうやって悩んでいた。でも、職場も変わって、それに慣れるのが大変で、それについてゆっくり考える暇もなかった。

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