3-性同一性障害、そしてカミングアウト


そして、僕は彼女との将来も考えていた。

そういうこともあって、僕は中学生のときみつけた、自分自身への疑問を解決するために、カウンセリングを受けようと病院に通うようになった。そして、その疑問や違和感は解決されることになる。診断書をもらった。

「性同一性障害。生涯性自認が変わることはなく男性です。」

僕は嬉しくて、嬉しくて、大学の間にやろうと思っていた目標を1つ達成できた。次の治療に進むにはお金だって必要だし、部活をやっている間はできなかったので、卒業したらすぐその治療をやろうと思っていた。


次に僕が向き合わなきゃいけなかったのは、家族。診断をもらえてから話そうと思っていたので、まずは兄弟から話した。弟も妹も理解してくれた。「そう言われても何が変わるわけじゃないから、お前はお前だからいいんじゃない」といってくれた。僕の中でも二人はきっと理解してくれると思っていた。だから、そんな心配はしていなかったけど、すごく嬉しかった。


そして、僕が一番この話をしにくかったのは母だ。僕はなんだかいつも大事な話というか、重要なことを母には言ってこなかった。いつも家族に秘密主義者だと言われるくらいだった(笑)僕は家族にも友達にも自分をさらけ出すのが苦手で、基本的に自分のことは話さなかった。大事なことに限ってなにも言えなかった。でも、こればかりは話さないで済む話じゃないから、いつ切り出そうか迷っていた。


僕が4年生になったばかりのころ、母と都内で会うことになり、そのとき切り出そうと決めていた。ファミレスで僕は意を決して話をした。母は驚く様子もなく、「自分のことは自分で決めなさい。わたしの人生じゃない。あなたの人生だから」と言ってくれた。正直、母だけは受け入れてくれるか心配だったから嬉しかった。しかし、この後僕と母の間に勘違いが生まれてしまう。


そしてもう一人、僕がどうしてもカミングアウトしたかった人。それは、僕の恩師。小学校6年生のときの担任の先生だ。その先生には成人式のとき再会して、その時の飲み会で実は・・・と切り出した。先生も理解し受け入れてくれた。その時はまだ家族にも話していなかったので、その不安とかこれからのこととかたくさんのことを話した。先生は

「お前の母ちゃんなら大丈夫だよ。わかってくれる。じゃあ、お前の目標が達成されたら、その時は男同士飲もうな。男としてだから容赦しないぞ。覚悟しとけよ。」

と言って涙ぐみ、先生の人生の後悔を話してくれた。僕には後悔してほしくないと。僕はなんとも言えない気持ちになって、人目をはばからず泣いた。まさかそんな言葉が返ってくるとも思わずうれし泣きだった。先生の後押しもあって、僕は勇気をだして家族に切り出せたんだと思う。こうして僕は自分自身と向き合って、周りの大切な人にカミングアウトすることができた。

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