第一章 スタンド・バイ・ミー
ロメオ
何から話そうか。俺とディエゴの関係については、きっと色んな奴がいろんなことを言うだろうが、それを信じる必要はない。俺が語る事が真実だからだ。
物心ついた時から俺とあいつはつるんでた。チビのくせに気性の荒い奴で、いつでも地元ではケンカが絶えなくて、だいたいが負けそうになってるあいつを俺が助けてやるってのがお決まりのパターンだった。とはいえ、俺とディエゴとふたりだけで町のガキ大将グループを相手にするもんだから、大体がこっちが
「……よぉディエゴ、生きてるか?」
あかね色に染まった空を仰ぎながら、俺とディエゴはボロ雑巾になっていた。村のガキ大将にチビってことをからかわれたディエゴが殴りにかかったが、案の定ぼこぼこにされて……と思ったらディエゴは相手の金玉を蹴るわ噛みつくわ石を投げるわで意外と善戦をしてた。ガキ大将が仲間に助けを求めて、ディエゴが多勢に無勢になってたところを俺が割って入っていったんだが、数人殴り倒したところで三人に囲まれて俺も袋叩きにあってしまった。
「……ふざけやがって、仲間がいないと何もできない腰抜けじゃねぇかよ」
ディエゴも空を仰ぎながら言った。
「……仲間がいるから厄介なんだよ」
「そうかい。じゃあ、仲間がいなけりゃああいつはただのデカブツってぇわけだ」
「……どうするつもりなんだ?」
「誰だって一人の時があるさ……。」
「……何企んでんだよ、ディエゴ?」
「大丈夫だって、心配すんな」
ディエゴが普通のガキと違うのは、必ずどうにかして復讐を果たすってところだった。仲間がいるから強い、そんなガキ大将には……奴がひとりで立ちションしてるところをディエゴは襲いやがった。もちろん、そんなことすりゃあいつだって同じことをやられるんだが、あいつは相手が根負けするまでその復讐のゲームを続けるんだ。ガキ大将はただ面倒になっただけ、自分は負けていないという事をアピールするんだが、まぁディエゴの思うようにゲームが終わったのだから、ガキどもはそのゲームの勝利者を口にせずとも知ってたもんだ。
あいつのもうひとつの特徴に、とにかく人とつるみたがるってのもあった。あんなに気性が荒いくせして、常に人を集めて遊びたがるんだ。ガキどもが興味を引くような新しい遊びをいつも考えたり、大人の行商人の仕事を手伝って小銭を稼いで、その金でみんなにキャンディーなんかを配ったりもしてた。ただそれだけなら、仲間に媚びへつらうご機嫌取りなんだが、ディエゴの場合はそこで終わらなかった。そのキャンディーの味を仲間に覚えさせて、次に自分の手足にして行商人の手伝いさせて、そしてガキには十二分なほどの小遣いをかき集めたりしてたんだからな。とにかく人を操る術に長けた奴だった。大勢引き連れた仲間の真ん中をいつも機嫌良さそうに歩いていたよ。
もちろん、その隣にはいつだって俺がいた。俺はあいつの相棒だったからな。
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