第2125話:キルパ・リーヴィ~交代要員~

「来ねぇ……」

 僻地の観測基地での報告役としてここ1年滞在していてそろそろ任期が終わろうとしているのだが、交代要員が来ない……

 交代当日までにはまだ数日あるとはいえ、交代のための引継ぎやら生活のための私物搬入搬出も含めて数日前、ちょうど3日ぐらい前には来るのが定番となっていたのだが、今回はまだ来ない。

 交代要員が来なくても仕事の契約的にはここにとどまり続ける理由は無いのだから帰っても良いのだが、ここには様々な理由があって直通のゲートは繋がっていない。

 最寄りのゲートがある街まで何らかの乗り物を使う必要があり、もし徒歩で移動しようと思うなら1季丸々の行軍を覚悟しなくてはならない。

 持っていける食料にも限りがあるのもそうだが、ここ1年ずっと座って仕事を続けている状態でそんな距離時間を歩きぬけることなど絶対に不可能……!

 ここに来るために乗ってきた乗り物も前の報告役が帰るのに使って乗って行ってしまった。

 つまり脚は無く、次の交代要員が来るまでの間絶対に帰ることはできないということ。

 そして同時に持ってきた備蓄の食料も心許なく、交代当日を過ぎて生活できるほどの余裕はない。

 これはもし、何らかの事故で交代要員が来ないと死ぬかもしれないな……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る