第2102話:クリカ・マイライブ~超音速配達~
「お待たせしました~」
「相変わらず早いね~注文してから5分ぐらいしか経ってないよ」
「もちろんです、私の飛行速度は世界一ですから!」
商品倉庫からこの場所までは1秒すらかかっていない。
掛かった5分の内訳をすると99パーセントが棚から注文の商品を探していた時間だ。
「いいねぇ、そんな速度で空を飛べたら楽しいんだろうなぁ」
「いやぁ、まぁいろんな場所に一瞬で行けるのはいいですけど、飛ぶこと自体はあんまり楽しめるもんじゃないですよ」
「そうなのかい?」
「えぇ、例えるならそうですね……私にとって商品倉庫からここまでの距離は普通の人が一歩足で歩くのと同じ感覚なんです。それこそ1秒ですからね」
「あーなるほどなんとなくわかってきたぞ」
「えぇ、一歩だけ歩くのって楽しいですか?」
「まぁそれが楽しいか考えたことも無かったなぁ」
「しかも不注意に飛ぶとうっかり飛行物にぶつかって大変なことになるんです。普通の人に喩えると、タンスの角に小指ぶつけるのと同じです」
「それは確かに痛い……」
「私は結構丈夫な体をしているから大丈夫なんですけど、ぶつかった相手は大変なことになりますからね。あらかじめ進路上の障害物の存在を確認できる距離でしか全速飛行はできないんです。それが配達圏内ってことなんですけど」
「うーん、結構制限は多いっぽいねぇ。楽しく飛べるとは無縁そうだ」
「ま、この仕事は結構楽しいんですけどね。いろんなところでいろんな人と会えるしっとそろそろ戻らないと、次の注文が入っちゃった。では、またのご利用お待ちしております~!」
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