第2093話:クレバス・モーディ~世界最後の~

「私はあの世界で最後の生き残りだったんですけど、心半ばで死んでしまったんですよね」

「はぁ」

「精一杯のやれることはやっていたので死んでしまったのは仕方ないにしてもですね。困ったことがいっぱいあるんですよ。」

 結構割り切ってるんだな。

 心半ばで死んだ奴の相談事なんてどうにかして生き返りたいみたいなのが多いんだが。

「私があの世界からの最後の転生者になるわけでしょう? あの後どうなったのかが気になって気になって仕方ないんですよ。どうにかして私が死んだ後のことを知る方法ってないですか?」

「あーそれは難しい話だな。こちらの世界から他の世界を観測する方法はほぼ無いと言ってもいいからな。どんどん来る転生者の記憶を頼りに他の世界の歴史書が作られているような状態だ。だから、最後の一人がいなくなってしまうとそれ以降の情報は得られない」

「そんな……」

「万が一にも無い話だが、以降に新たに知的生命体が発生して記憶を持ってこちらに来たとしても発生するまでの記憶や歴史書は当然ないわけだから……諦める方がいいな。とてつもなく考古学が発達して遺跡から情報を集めて持ってきてくれるとかすればギリギリあり得る範囲だが、それこそこっちでの君の寿命に間に合わないよな」

「やっぱりそうなりますか……」

「まぁ前のことは忘れた方がいいってことさ。いや、忘れる前にちょっと行って欲しい場所があるが……」

 最後の人間の記憶を元に最後の歴史書を作ってもらわなければならない。

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