第2042話:ヴィン・ライモ~浴びるほど~

「うお~! めちゃくちゃ美味いぜ!」

「そういうおいしい飲み物って浴びるほど飲みたいって言いますよね?」

「おう、よくそうやって言うよな。いやぁ、でもこれなら本当に浴びるほど飲んでみたいぜ」

「そう言うと思いまして、本当に浴びれるほどの量を用意してみました~」

「え゛!!!」

「こちらへどうぞ~!」

「うっわ! マジじゃん」

 案内された部屋にあるのは巨大な水槽、それを満たすのは先ほど振舞われた飲み物だ。

「本当に浴びれるほど飲めるじゃん!!!っていうか泳げるほどあるじゃん!??!?!」

「その通り! 私は人が浴びるほど飲みたいって言ったときに実際浴びるほど飲ませてみたらどうなるかとても気になって仕方がないという癖を持つ者……」

「へ、変態……!」

「違う、純粋な知的好奇心だ。今までに何人もを誘い込みここでいろいろと試してみた。結局グラスで飲んだ者、あそこにあるシャワーから浴びてみて結局ビビッて逃げた者、あの水槽に飛び込んで全身で吸収して死んだ者などは思いのほか沢山いた。私はただ君がどういう反応を示すか見てみたいだけなのだ!」

「やっぱり変態じゃないか!」

 この人は変態なのは間違いないが、この量を好きなだけ飲んでいいという提案には心惹かれる。

 さすがにシャワーで浴びたり、飛び込んだりはしないが……って待てよ?

「最近飛び込んだ者が現れたのはいつだ?」

「最近だと一昨日ぐらいかな? 彼は結構耐性があったらしく、死にはしなかったが……」

 人が死んだことがある水槽で、というか最近人が泳いだことがある水槽の中の液体、飲みたくないな……

「私は遠慮させていただきます……」

 そう言って、店自体を後にした。

 衛生管理がガバガバ過ぎる気もしたからだ。

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